BOYZ LOVE
□チョコ+塩=?
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ほんの少し。ほんの少しの塩分で、チョコレートの甘さは増す。
ほら。西瓜に塩を掛けるのだって、より甘く感じるためでしょ?
めんどくせー。
別にバレンタインは嫌いじゃなかった。毎年ある程度チョコはもらっているし、その中には義理じゃねーもんが含まれていることもある。
「めんどくせー」
しかし今年は、違う。
「なんで?」
不満げな顔のカカシとはさっきからずっとこの調子。
「女じゃねんだし」
そう。言わずと知れたことだ。オレは男で、カカシも男。
出し抜けではあるが。シカマルとカカシは、恋人同士である。しかしお互いアブノーマルなわけではなく。ましてや、今まで同性としか付き合ったことがなくてぇ〜、なんてこともない。
二人とも元々は、女の子の仕草やら匂いやらにドキドキする普通の男児なのだ。
問題は、どっちがどっちなのか、だ。包み隠さず話すならばタチかネコかである。
「シカマルからもらいたいなー!」
いつになくカカシは食い下がる。けれどこちらとて、男のプライドは捨てられない。
そりゃ、セックスの時はオレが下だぜ。でもそれが何だっていうんだよ。
「カカシ」
あ?と捲くし立てていた口を口布越しにも分かるほど間抜けに開けて。カカシはシカマルを見つめた。
「オレ、やっぱムリ」
鼻の奥が痛かった。海水が入ってきたみたいだ。
今日が、バレンタイン前日だなんて。後悔ってのは、なんで後から襲ってくるんだろう。
「あっ後で悔しがるからか」
当たり前のことを独り呟く。卑屈になって、行く当てもなくただのろのろ歩いた。
さっき通ったばかりの道は、なんだかくすんで見えた。
今までバレンタインなんてどうでもよかった。誰から貰おうと、それに相手のナニが詰まっていたとしても、俺にとったらただのチョコだった。
俺は単にシカマルからのチョコが欲しかった。それだけのことを何でシカマルがあそこまで頑なに拒むかなんて俺には分かんない。
ただすごく悲しくなった。
お前はあげる気ないんかい!とツッコみたいのは作者だけであろうか?
全く勝手この上ないが、カカシは微塵も、チョコをあげる側に廻るという考えを持ち合わせていないらしい。しかし。こう言ってはなんだが、カカシが誰かにお願いすることなど(態度はどうであれ)かつてあっただろうか。
……いや。きっとないだろう。
シカマルもそんなことは分かっていた。誰よりもカカシの近くにいる彼だからこそ、カカシが自分に懇願する姿は目に余るものだった。
ただ。ただだ、こういう世知辛い世の中で、同性の仲などどうやっても報われない残酷なこの国で。どうして男二人のバレンタインデーがハッピーなものになるのだろうか。