めんどうくさいけど
□愛する人を
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どうして。いつの間にこんなに臆病になったんだろう。
答えは当たり前のようにオレの横を通り過ぎて、代わりに憎たらしい笑みを寄越した。
「カカシぃ……やめろ、うあっ」
「ごめん……ごめんな……」
オレはただ鳴かされていて、カカシは何度も謝ってくる。何に対してなのかは分からない。
でもそれはまるで意味を持たない姑息な言葉でしかないように思えた。
「あれカカシ先生」
今日のカカシはどこか変だった。
「やあ」
報告書を手に目的地へ向かうとただボーッと突っ立っているカカシがいた。
「なんか眠そうっスね」
こう言ってしまえばそこまでなのだが、どうも様子がおかしい。飽く迄、それはなんとなくではあるけれど、イルカ先生を含む受付当番のやりにくそうな様子を見て、「眠そうですね。それじゃ」では終われない。
恐らく銀の上忍は報告書を提出してから、無意味にずっとここに立っていたのだろう。
でも格下の先生たちはどうにもコレには話し掛けずらくて。放置していたらそのまま動かなくなってしまったという感じか。
カカシは決して空気が読めない奴ではない。上忍の自分が居座れば中忍たちに気を遣わせてしまうことくらい知っている。
つまり、今日は何か相当のことがあったんだと思う。
「ああ、最近よく眠れなかったからなー」
カカシは小さく笑った。
「……あっあのそれより、よかったらこれから飯行かないスか?」
まだ夕飯には大分早い時間だがイルカ先生たちを救うためには仕方がない。多少の無茶は気にしないでいこう。
「いいよ」
怪しまれることなんてない。
「そんじゃ行きましょ」
確信はないけれど。
周りからの、早くどっか行ってくれオーラを全身で感じながら飄々としているカカシの手を引いてオレは任務報告所を出た。
「今日何かあったろ」
寄り道せずにカカシの家に帰った。
あまりに唐突な質問にカカシは驚いたように目を丸くして。
困ったように笑った。
「別に何もなーいよ。それより早くヤりたい」
この男はどんなことも爽やかに言い放ってしまう。
「ちょ……」
それはある意味とても残酷だ。