めんどうくさいけど
□mirror
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「話がある」
来た、と思った。
二人はだらだら階段を上がって、屋上に向かう。重い扉を開けると、太陽が頭に刺さってきた。
「何だってばよ」
嫌だ。
どうしてそう思うのか、ナルトには分かっていた。
「俺、お前が……」
この国は同性愛に対して寛容じゃない。
男が男を好くということは、異常とされて、それに丁寧に差別用語まで付く。ゲイ、ホモ。未だ軽蔑する人は少なくない。
「聞きたくない」
「……は?」
「聞きたくねぇってばよ!」
自分が誰かに認めてほしいように、彼らだってそう思っているに違いない。それを分かっていてこうしている自分は、心底怖がりな奴だ、とナルトは思う。
目の前で呆然としているサスケに、今までどれだけ思わせ振りなことをしただろう。それがどれだけ、彼を苦しめただろう。
そして今、彼はどれだけ自分のことを嫌いになっただろう。
「何でだよ」
「聞きたくねぇから」
「ったく。だから」
「サスケ」
負けてしまうかもしれない。この瞳に、髪に、腕に、足に、汗に。
嫌だ。
「何だ」
「嫌じゃないのかよ」
太陽が痛い。
「嫌じゃねぇ」
「全部……か?」
「……一つだけある」
「何だってば」
「お前を失うこと」
顔が紅い。鏡を見てるみたいだ。こんなに整った顔ではないけれど、これは鏡に違いない。
太陽が痛い。
鏡は反射した。
完
→あとがき