めんどうくさいけど
□チル・アウト
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無理だった、この気持ちに気づかないまま過ごすなんて。
こんな風に自分が変わるなんて、思わなかった。
「明日空いてる?」
「あ、はい」
顔見知り程度だった上忍とは、ある任務を期に急に親しくなった。
まるで好きな人の趣味を真似る子供の恋のように、オレは変わっていった。
要するに、相手に合わせるようになった。けれど自分を曲げた覚えはない。それがとても不思議だ。
相手に対して持つ印象は悪かった。初めて会った時に感じた、自由奔放な雰囲気は決して嫌いではないけれど――若干、自分にもそういうところがあると思うし――何故か近づいてほしくなかった。
いま思うと、そのときから決まっていたのかもしれない。オレがアンタに嵌まるってことは。
そして、オレの本能みたいなものがそれに気づいて、警報を鳴らしていたのかもしれない。
まさか。
同性を好きになるなんて。
「それじゃ、任務終わったら映画見に行こう」
「あ、いいっスよ」
落ち着け。
ただの――仲間としての――映画の誘いだ。
同性愛には偏見がある。
同性愛には未来がない。
それに大抵は片思いだ。
ましてや、あのはたけカカシという男には、オレ以外にも趣味が合う仲間はいるだろう。
唯一、だなんて勘違いするな。
「嫌だ、好きじゃ、ない」
ギシギシ鈍い音を立てながら、ベッドが上下に跳ねる。あと少しで、天井に頭が付いてしまう。
「ただ、ひと、として」
好きなだけなんだ。
「言って、離れ、るくらい、なら、言わない、方がいい、に決まって、る」
―――こんなこと、一生考えない予定だったのに。
一階から母ちゃんが、うるさいとか何とか叫んできた。
跳ねるのにも疲れて、そのまま眠りについた。