めんどうくさいけど
□めんどうくさいけど、いとおしい。いろいろあるけど、一緒にいたい。
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たまたまカカシ先生を見つけたから、ただ単純に朝のあいさつをしておこうと思った。カカシ先生はアスマの為に一緒に戦ってくれた人だから。
「カカシ先生っ!」
「シカマル、早いね」
「オレときどき朝に散歩してるんすよ」
「そうなの」
「カカシ先生はどこ行くんすか?」
リズムよく進んでいた会話がぷつっ、と途絶えた。何かまずいことを聞いてしまったんだ、と思いオレはいつもは滅多に作らない笑顔を拵えようとした。
「……親友とアスマに会いに行くんだよ」
一瞬、このひと死にに行くんじゃないよな、と思ったがすぐにそうじゃないと分かった。死にに行くひとの顔じゃなかった。まだやり残したことがある顔だ。
「あの……」
「なに?」
「オレも付いていっていいすか」
「……慰霊碑だからすぐそこだよ」
目尻を下げて片目だけで笑ってみせた彼は、うたかたのようで――――。
めんどうくさいけど、いとおしい。
いろいろあるけど、一緒にいたい。
「アスマはシカマルのこと、よく話してたよ」
「……そうすか」
「自分の子供みたいにさぁ優秀だの、可愛げがないだの……よく聞かされた」
話しながらカカシ先生は鼻を啜った。涙は流さないのだろう。そういうひとなんだ、たぶん。俺はもう涙は出し切ったから、空っぽだ。
先生は急に黙ると、額当とマスクを取って静かに腰を下ろした。オレも倣って隣に座った。
「……カカシ先生の親友、いつ亡くなったんですか」
「15、6年前だよ。ほらアスマとこーんな離れてる」
碑に触れると、アスマと親友の名に指を滑らせる。悲しみを堪えるように、ゆっくり、ゆっくりと。