BOYZ LOVE

□支配されないものもの 後編
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 里に着いてやっと解散って時。



「家まで送るよ!」

 やさしい親友の言葉でさえ煩く感じた。
 シカマルは悔しかった。敵に怯んだんじゃない。ただ戦う時になって体がナニカに抑制されたのだ。その“ナニカ”は分からない。


「……いい」

 仲間が任務に就いている間、自分はただベットの上で暇を持て余すことしかできなくて。
 シカマルはやりきれない気持ちだった。




「はあ……」

 シカマルは家に帰るのがめんどーで、以前カカシに会ったあの場所に向かって歩を進めていた。
 今日もあの時と変わらない、はっきりしない空。



「あ!」

 すぐさま口を手で押さえるが、出てしまった声を取り戻すことなどできなくて。
 そこには、久方ぶりに見る銀色。

 口の中に血の味が鮮明に甦る。もう1週間経ったんだ。



 あんなことされたのに。

 あんなことがあったのに、なんだこの気持ち。




 銀色に起きる様子はなく、しばらくシカマルもそこに突っ立っていた。

 お前、こいつに蹴られたんだぞ。痛かっただろ?口ん中切れたんだぞ?いいのか。こいつほっといていいのか?こいつ寝てんぞ。今なら殺れるかもな。あっでも後が怖ぇわな。それにお前……どうする、シカマル。どうする。


 いつかのように再び自分を質問攻めしてリンチしているシカマル。
 銀色は規則的な呼吸を繰り返すばかりで。





「オレ……」

 おもむろに少年は口を開いた。心の自分だけに伝えるには、この気持ちは大きすぎてそして貴重だった。

 口に出すことで心に掛かる反動を少なくしたかった。


 結果、寝ている上忍に言うことになるのだが。

「オレ……アンタのことどうも思ってなかった。ただその気になって。でも……」

 また勝手にオレが動きだした。自制心とは脆いものだ。


「……でもこの前から変わった。ここで会って、そのあとは思い出したくねぇけど。


オレ、カカシ先生が好き……みてぇ……え」

 のっそりと起き上がった上忍。銀色がふわりと揺れ、瞬時に逃げようとする少年の腕を捕まえる。

「あ、こっこの前はすいません」

 少年はガラにもなく焦っていた。



「いいのいいの」
「……放してください」



「あ、お礼」


 またあの感じ。期待がオレをぬか喜びさせる。やめてくれ。これ以上……

「あの……」

「まだだったから」








ファースト、キスだった。





 どのくらいキスってすんだ?もう目の前まっくら。



 は?



 上忍は口布をしたままだった。そんなことはよくて、いやよくないのだが。

 シカマルはかなりのスピードで移動していた。正しく言うならば、移動させられていた。

 行き先は……?





 まだ支配されきらない。
 この銀色をオレだって支配したい。




 支配されたい。

 支配したい。






 今日も、はっきりしない。








→あとがき

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