長めのはなし
□そしてずっと好きでいて
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今日は年に一度の大イベントの一つである球技大会の日。
他の学年、クラスも試合をしているというのに、何故か中学の後輩から高校の先輩達、ましてや他校の女子までもが某達のクラスの試合の応援席ににぎわっていた。
「「「「きゃあああ!!猿飛くーん!!!」」」」
(ああ…何故この女子達は試合をしている某達よりも熱くなれるのだろう…。)
何故自分のクラスの応援をしないのだ、ていうか女子は何故自分達の試合を放棄してまで佐助を見に来るのだ、何故他校の女子は授業を受けずに此処にいるのか。
ていうか、何故こんなにモテるのだ。佐助は。
今時、こんなにも女子高生を集めるイベントがあるだろうか。どこぞのアイドルグループじゃあるまいし、ただの男子高校生にファンクラブまで作られる事などあるのだろうか。
(佐助も佐助だ。何故そんな軽々しくTシャツを脱ぐのだ!ぬっ!しかもウィンクまで!!)
佐助は基本的女子に優しい。名前を呼ばれれば手を振るし、応援されれば期待になるべく応えようとする。
(某がどんな思いなのかもしらないで…)
少しムムッとして黙っていると、
「幸村、お前も脱いじまえよー」
あちー、と呟きながら丁度Tシャツを脱いだクラスメイトの長曾我部元親がこちらへと向かってきた。
その途端に周りの女子達の黄色い悲鳴が聞こえる。
そう、元親も佐助と同じくらいモテるのだ。
「いや、某はいいです!女子がこれだけいるのに、恥ずかしくて脱げませぬ!」
「何言ってんだ、見てるこっちが暑いっつーの。てか大丈夫だって、皆脱いでんだろーが。」
「それはそうでござるが…!」
「ゴチャゴチャ言ってねぇで脱げって!男は身体で勝負すんだよ!そらっ!!」
その途端、元親によって幸村のTシャツがひっぺはがされ、
そのTシャツは空しく空中を舞った。
そしてあらわになった幸村の上半身。
「幸村くん超華奢!!女の子みたいー!!」
「腰細っ!!可愛いー」
「やーん、犯したいー」
その瞬間応援席から聞こえる女子達の破廉恥な言動に顔が真っ赤になる。
だから嫌だったのだ。某は周りの男子よりも軟弱な身体つきを何よりも気にしていたから。
元親も、周りも男子も某の方をずっと見ている。
(…もう、最悪でござる!)
自分自身がいたたまれなくなって、目をギュッとつぶると
「いってぇえええ!」
聞き慣れた佐助の大きな声が響いた。