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□6月人魚の丘を夢見る
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「ふ、ぅ…ん…っ//」
甘い声を漏らしながら、湿った砂の上で綱吉が身を捩る。

はぁ、と息を吐いて獄寺の唇が綱吉の薄く開いたそれからそっと離れる。

「…人間って、怖いって聞いていたけど…獄寺くんはそんな事ないね」
自分を組み敷く少年らしい、しなやかな体格の獄寺を、綱吉は熱っぽく見上げる。

(……//)
獄寺は至近距離でその甘く揺れる蜜色の瞳に覗き込まれ、思わず熱を帯びる体を持て余すように、その塩辛い白い首筋に舌を這わした。

「…あ//」
人間でいうところの半裸の肢体は、感じたようにピクリと小さく跳ねる。


「他の奴らは知らねーけど…、俺が優しいってんならそれは、俺が綱吉を…好きだからだろうな」
そう言いながら、また唇にキスを落とす。




“他の奴らは知らない”…?

(…嘘だ)
獄寺は口付けながら薄く目を開ける。

(きっと他の誰もが、綱吉を見れば恋するだろう。
手に入れようと躍起になって、争いが起こるかもしんねぇ)

あの夜、

たまたま彷徨いていた入江でコイツを見つけた時、そのあまりの美しさに、一目見て心を奪われた。

(月光を映したような優しい瞳、海の中にありながら、太陽のように柔らかい陽を思い出させる髪の色…)

銀色の鱗が海水に濡れて、妖しく蒼身を帯びて輝いて。

気が付けば恋に落ちていた。
何度か合う回数を重ねるうち、どうしようもなく手に入れたいと思った。

綱吉にそう告げると、綱吉も頬を赤く染め、
「…オレも獄寺くんといたい…。もっと、側にいたいよ」
と言ってくれた。

そうして俺たちは恋人同士になった。















「…綱吉って、可愛いんだな」
何気ない仕草に、誘われるように初めて口付けた時、綱吉は何をされたのか分からないみたいだった。

「…え? 何? 今の…」

きっと海の世界では、肉体的な性欲というものはないんだろう。

生殖は、ただ、子孫を残す為の行為でしかなく。

「…人間の恋人同士は、こうやって、触れて、互いを感じて、愛を確かめ合うんだ」
獄寺は綱吉の華奢な体をそっと押し倒す。

海に濡れていた身体は、冷たいかと思いきや、存外人肌は温かかった。

「…不思議。獄寺くんとこうしてると、すごく安心するんだ…」
抱きしめると、綱吉はうっとりと目を閉じる。
(海の中には無かった世界…君の存在は、すごくオレを惹きつける)
優しい優しい手のひら。

なのに時々、触られてると何だか身体がぞくぞくする。

「…や…っ//」
胸の飾りに触れられた時には、
今まで感じた事もない快感に、耐え難く身を何度も捩った。

(何だろうコレ…この“感じ”が、人間同士の愛っていうのかな…)
綱吉はトロンと目を滲ませる。

「…誰にも渡したくねぇ…、海の中にも戻したくねぇ…ッ!」
獄寺はそんな愛しい恋人を、掻き抱くように抱きしめる。

夢中になる度、一時も、離れていたくないという気持ちが強くなる。



綱吉はそんな獄寺を見て、背中におずおずと手を回した。

「獄寺くん…」

自分も彼といたい。ずっと側にいたい。
(初めて合った時に、惚れたのは俺だ、って、獄寺くんはそう言うけど…、それはオレだってそうなんだ)

「好き…大好き、愛してるよ」

綱吉は獄寺の首に手を回すと、囁くように何度も愛を口にしながら、不器用にキスを返した。


 
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