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□6月人魚の丘を夢見る
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陸の上には人間という恐ろしい生き物がいて、僕たち人魚を食べるんだ。そりゃもうバリバリとね。

長兄の雲雀が言った。


 † † †


「そうかなぁ、そんな怖い所かなぁ」
末っ子の綱吉は首を傾げる。
(だってオレがあった人は、とても素敵な人だったんだ…)

それは運命的な出会いだった。

兄弟たちの言う事も聞かずいつものように探検に出た綱吉は、綺麗な月明かりに誘われるまま夜の静寂をたゆたっていた。

(…綺麗)
ポチャリと顔を出して仰向けに漂いながら、潮風を感じつつ目を伏せ波に身を任せて。

気が付けば浅瀬にまで流され、潮が引き、海に戻れなくなってしまっていた。

(―…ど、どうしよう…)
泣きたくなる。
陸の上は怖い所だと、散々聞かされ吹き込まれていた事が、漸く身に染みて恐ろしく思えてきた。
だが時既に遅く、もはや尾鰭は身動きすら出来ない。

綱吉はハッとした。
サクッと砂を踏む音がする。
誰かがこちらへ近づいているのだ。


ガッ、と隠れている岩場に手を掛ける人影、
「きゃあっ!」
綱吉は悲鳴を上げた。
(ヤバい!人間に見つかった…!)

「な、なんだ!?」
恐怖に身を竦める綱吉の頭上から、驚いたようなハスキーな声が降る。
綱吉は怯えながらもそっとその声の主を見た。

(…あ、銀色の…)

そこにいたのは先程まで感じていたはずの、月光を編み出したような銀糸の髪の少年。



それが綱吉と獄寺の出会いだった。



 
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