贈り物
□『shining star』
1ページ/1ページ
「すっかり遅くなっちゃったね」
オレと獄寺くんは、今日は少し遠出して、山本の野球の応援に来ていた。
結果は上々。祝勝会に顔を出してから帰ろうとすると、予想外に足止めを食らってしまい、結果オレたちは予定のバスに乗り遅れてしまったのだ。
「全く、あの野球バカが、10代目のお手を煩わせやがってっ!」
憤慨する獄寺を宥めるように、まあまあ、とジェスチャーを付けて綱吉は微笑む。
「…次のバス停まで近いから、散歩がてら歩こう?」
そう言うと、軽く獄寺の腕を引いて歩き出した。
辺りはすっかり夕暮れも過ぎ、紫色の空に星が瞬き始めている。
人気のない河原を、ゆっくり、ゆっくり歩を進めるように、綱吉は踊るように軽やかに歩く。
旧式のガス灯を真似た街灯が、ポゥっとオレンジ色の灯りを灯す頃、
仄かな月明かりが綱吉の細身の身体を浮かび上がらせ、その白く美しい横顔に獄寺は思わず眼を奪われた。
(…綺麗っス)
魅とれて歩いているうちに、引き寄せたい衝動に駆られる。
すると━…ズルッ!
獄寺は足下を気遣うのを疎かにして、脚を滑らせてしまった。
「どわっ!??」
「え!?うそっ!!」
斜面を滑り落ちる獄寺を助けようとして、綱吉も勢い余って同じように転げ落ちる。
ズザザザザァ、っという音が響いた。
「い、痛たたた…ι大丈夫?獄寺くん…」
「はい、俺は…10代目こそご無事ですか!?」
漸く止まった頃、綱吉は獄寺の胸の上にいた。助けるつもりが、助けられてしまったらしい。
心配そうにあちこち見られて、少し緊張する。
(やだな、何か照れる…)
そそくさと身体の上から退いて、綱吉は獄寺の視線から逃げるように辺りを見回した。
「オレは大丈夫だよ。何か、下が柔らかくて…うわぁ」
感嘆して声を上げる。下には一面の黄色い菜の花畑が広がっていた。
「…綺麗っスね」
「綺麗だね」
自然二人して寝転んで、高い空を見上げる。すっかり日が暮れて、空には満天の星が煌めいていた。
(落ちてきそうだ━…)
明滅する星々の密やかな耀き。
瞳を閉じて、その空気を感じるように大きく吸い込む。湿った草の匂い、菜の花の甘い香り。微かな煙草の残り香…
動く音がしてそっと眼を開けると、獄寺が身体を起こして綱吉を斜めに見下ろしていた。
瞳は綱吉を捉え、じっと、動かない。
(…ずっと、見られてたの…?)
見つめられていた事に心臓が跳ねて、胸の奥からジクリと、甘い疼きが堪らなく込み上げる。
投げ出されていた綱吉の左手に、獄寺は己が手を重ねつつ、ゆっくりと覆い被さった。
その動作一つ一つに眼を奪われ、綱吉は眼を反らせない。
(絶対、心臓、壊れる…)
胸の動悸が大きくなる。自分の中で、大きな音を立てて耳の奥で反響する。
動悸。
目眩。
甘い、痺れ。
「…逃げないんスか…?」
真剣な、君の眼差し。
「…逃げ、る?」
逃げるってどこへ?
この腕から逃れて、何処へ?
この心はもう、君に捕らえられたまま、何処にも行くことが出来ないっていうのに…
「…逃げないで…」
見つめられたまま顔が近付く。更々した髪が、顔に触れる。一瞬躊躇って綱吉は、しかし震えて眼を閉じた。
「…ん」
優しい、優しいキスが降る。
重ねられた唇、互いの熱を感じて薄く開く。段々深くなる口付け、腕と胸に閉じ込められて、もう動けない…
角度を変えて、何度も繰り返される、甘い、甘い誘い。
込み上げてくる熱に、綱吉は身を捩る。
「あ、…はぁ、んんっ」
いつの間にか脚の間に割り込まれ、それこそ身動きがとれないまま、
パーカーの隙間から手を忍び込まれて、しっとりした肌を味わうようになぞられる。
「…やだ、誰かに見られ、る…」
「…誰も見てませんよ?この、宙と、俺しか…」
薄く眼を見開いて、獄寺の肩越しに空を見上げる。
相変わらず落ちて来そうな星々に包まれ。
この世界に、二人だけしかいないような錯覚。
(見ないで、誰も…
隠して、オレたちを━…)
熱くなる身体を感じながら、綱吉はまた静かに眼を閉じた。
━━━
リクは、強気な獄ということでした(^w^)♪強気になってるかは疑問ですが最初強気と鬼畜取り違えてヤバい妄想してたのは私ですι
キリリクありがとーございました!