贈り物

□『両腕に薔薇を抱いて』
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コンコンっと部屋のドアを軽くノックして開ける。
「隼人…、いないの?」



 † † †



今日は久しぶりのオフ。予定という予定が全くない。

(こんな素晴らしい日、めったにないっていうのに、どこ行っちゃったんだろ?)
天気も上々、季節も麗らかな6月。外は澄みきった爽やかな空気。
窓辺に近づいて外を見遣る。
(せっかくSPを撒いてきたのにな)
『せっかく』という程難しい事ではない。何せ彼は、この巨大ボンゴレの10代目にして現当主であるのだから。

白いカーテンが、フワリと風に揺れる。

「それにしても、何?この大量のバラ」
グルリと見渡せば、決して狭いとは言えない部屋の床一面に深紅紫のバラが並べられている。

『━…ジャムを作ろうかと思ってるんです』

ふと思い至った。そう言えばこの間、オレがお茶の時間に

『…ジャムが欲しいな、甘いやつ』

おやつに食べてたビスコッティがちょっと物足りなかったから、言ってみたんだけど。

(あれかな?)
コテンって首をかしげる。

(でも何でバラなのかなぁ?オレ別に苺とかで構わないのに。…あれ?苺ってバラ科だっけ?)
所詮は庶民の感覚が未だに抜けない綱吉であった。

考えながらいくつか手に取ると、アースカラーの彼のベッドに転がって、うつ伏せになる。

(隼人の匂い…)
…そう言えば、最近触れてないなぁ。

目を閉じると彼の骨ばった手が思い出される。ごつごつした、けれどとても優しくて繊細な━…

(…バラなんか摘む暇あったら、オレの相手してくれてもいいのに)
「━━…」

「━━…」

「━━━…っ」

(うわあっ、オレのえっちっっ!!)
何を考えたかボスっと顔を枕に埋める。

「えーっと!このバラ、花びら摘めばいいんだよね?て、てて、手伝っとこうかなっ」
急にオタオタと一人慌ててバラを手に取ると、

「もう!早く来ないと君のベッド、花だらけにしてやるからな!」



 † † †



「━…外部に出た痕跡はないのだから、必ず屋敷内にいる筈だ。君たちは引き続き捜索を━…」
ガチャリとドアを開けて自室に足を踏み入れた瞬間、彼の呼吸が止まった。

「━…いや、いい。見つかった。後を頼む」
ピッと無線を切って机の上にカタリと置く。

盲点過ぎて気付かなかった。まさか俺の部屋に居るなんて…

いつも自分が彼の部屋を訪れるのが常になっていて、意表を付かれたのだ。

「全く、貴方と言う人は…」
ふぅ、溜め息と共に言うが、彼の瞳は優しい。次第に愛しさが溢れてきて胸を締め付ける。

広いベッドに華奢な身体を少し丸くして、投げ出すように白く細い手足を晒して━…

周囲には薔薇の花びら。包まれて眠る、いばらの姫。

ギシリと横に腰掛けて、細い髪を指ですき絡める。

「…早く、起きてくださいね?出ないと貴方の分も、頂いてしまいますよ?」

用意したのは淹れたての紅茶に、作りたてのジャム。胡桃とアーモンドのパウンドケーキ。

甘い誘惑にも似た、香り高く立ち上る、気高く美しく艶やかな…







(…では、今宵は薔薇を抱いて眠りましょうか)







愛しさが花びらのように降り積もる。獄寺はそっと微笑むと、触れるような口付けを睫に一つ落とした。




 
━━━

 
ツキ様からのリクは、獄ツナで10年後捏造。幸せいっぱいな二人、ということで、ほのぼの目指してみました!

獄くんは3時のおやつにツナを探していたんですね。
わあラブラブ

1万打おめでとうございますo(^-^)o♪
これからも頑張って下さい!!



 

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