贈り物
□『禁じられた遊び』
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(無邪気ってある意味残酷じゃない?)
「紋白蝶…、黄アゲハ…」
クスクス
「山本ぉ、どぉすんの?」
数人の男の子が集まって
「捕まえるだろ?翅が、痛まないようにな。で、針を射すんだ」
虫籠からそっと捕まえて、生きているソレの腹に毒を打つ。
「…段々、動かなくなるだろ?。そしたら翅を広げて━…」
ボードに、ピンで差す。薄い翅は広げたまま
硝子の蓋で覆って、閉じ込める。
「ほら、綺麗だろ?こうするとさ、綺麗なまんまなんだ。取っておけるんだ」
満足げに笑うけど、それは。
「…でも。何か怖いね」
小6の夏休みだった。
辺りはもう夕暮れ、ひぐらしの鳴く声、人いきれする暑さの中
(どこだ?ここ…)
この辺では見掛けない珍しい蝶を追って迷い込んだその場所で。
そこだけ切り取られたように、冷たく氷のように笑む少年に、眼を奪われたんだ━…
◇ ◇ ◇
「アイツは何やらしてもダメだかんな」
「仲間に入れると負けんだよ」
中学生になって再び出会った『彼』の噂は、上記のようなもんだった。
(本当にそうなのか?)
だって俺は見たんだ。
「なぁツナ、俺のチームに入らねぇ?」
ざわつく周囲を他所に、何度も笑顔で声を掛ける。
「い、いーよ山本!オレに気を使わないで?」
ビクビクと卑屈そうに笑う。本当にそれがお前なの?
いつも俺の意識の片隅がお前を追う。小僧や獄寺が現れてからはなお一層。
焦る意識
アイツ等は知ってんのか?
(そんなことねぇよな!?)
俺の眼に映るお前はいつも通りのダメツナで、
なのに、増えて行く笑顔
こんなに見てんのにッ!!
(素顔が、見えねぇ)