短編小説A
□『秘密の話をしよう』
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「…ねぇ、お前はいつからオレが好きだったの?」
10年前のツナが不意に言った。二人で寄り添い、ベッドの中で。
うとうとと、微睡む寸前の半分閉じたツナの甘い瞳。
こいつは俺の中の葛藤を知らない。
(手を伸ばせば…)
触れられる、この距離が、今は胸を締め付けるばかりで、苦しくて、…切なくて。
耐えるように、ギュウ、っと拳を握り締める。
「…それは、過去の俺に聞くんだな」
「…聞けば、教えてくれる?」
「…ムリだ、な」
いつから? いつからなんてそんなの…
(━…知るかっ!!)
チッ!気が付けば、囚われていたんだ。いつからなんて、知らない。でも、そうだ…いつから?
意識したのは、いつからだったろう…?
「…ケーチ」
そう言って、ツナは眠りの中へ落ちた。
† † †
(こいつは予想外だったな…)
黒曜中のアジトで、次期ボンゴレ10代目ファミリーは絶対絶命の危機に襲われた。
敵は六道骸率いる黒曜ファミリー。狙いはボンゴレ10代目、『ツナ』を引っ張り出すことだ。
俺達は苦戦を強いられる羽目になった。
使える死ぬ気弾は現時点で一発…それすら、ランチアとの戦いで使ってしまった。
(最後の切り札は使っちまった)
なのに何だ?
普段負け犬のように怯えてるだけのダメツナが、傷付く仲間を目の前にして、精神的にも成長してきてやがる。
「アイツだけはどうにかしないと!! 六道骸だけは、許せない!」
強い意思を秘めた瞳。
いつからこんな眼をしやがるようになった?
ニッと笑みが出る。
(こいつはもしかすると、もしかするかもしれねーな)
ここにきて時折見せるツナの直感…アイツは気付いていないが、それはボンゴレの証だ。
《ブラッド・オブ・ボンゴレ》
永きに渡り、過去から脈々と受け継がれてきたもの。そいつがちゃんとツナの中にも宿ってる。
(さすがは俺の生徒だな)
そう思うと胸が疼く。
嫌な感じじゃない…だが、この俺にも解析出来ないなんて…この痺れは何だ?
伸び盛りの生徒たちは他にもいやがる。雲雀なんかは途中から無意識に戦ってやがった。
そう、戦いは終わったはずだったんだ。
骸が禁弾である憑依弾を使うまでは。
† † †
地獄道
餓鬼道
畜生道
修羅道
人間道
天界道
まさにコイツは生きた化け物だ。生きながらにして死界を廻る。
そして憑依弾。ヤツの目的はツナの身体か。
「クフフフ、目的ではなく、手段ですよ。若きマフィアのボスを手に入れてから、僕の復讐は始まる」
骸の言葉を聞いて、頭に血が上った。我ながら、冷静でなくなったことに驚く。
(ツナを…あいつをそんな目的の為に使おうっていうのか!?)
…しかし考えてみれば、骸にとってツナはこれ以上ない至高の存在だ。
未知なる力を秘めていながら、未だ未覚醒の、まっさらな、幼い身体。
乗っ取るのにこれ以上の存在はない。
チラリとレオンを見る。
(やべーな。俺はマフィアの沈黙の掟で手は出せねぇ)
けど…
(越えられる、筈だ)
この危機を乗り越えるには、ツナ自身が新たな成長をとげなけりゃいけねぇ。
それが吉と出るか、凶と出るか。
いずれにしても俺達は、こんな場所で死んでいい人間じゃない。
ツナ、俺は信じてる…お前を。
お前の中に眠るもう一つの血と、いつも皆を明日の希望へといざなう、その大空のような広々とした眩しい笑顔が、再び見られる事を…
† † †
「━…ン、リボーンってば!」
肩をユサユサ揺すられて、ぼんやり眼を覚ます。白いデッキチェアの上、俺の眠りを妨げやがって…今夜は覚えてろ?
スーツ姿のツナを睨む。
「お前、いつでもどこでも所構わず寝るのやめろよ。
そーゆーとこ、ちっとも変わんないんだから」
腰に手を当ててあきれたように溜め息を吐く24のツナ。現ボンゴレ10代目。
「…お前は変わったな」
「え?どんな風に?」
眼をキラキラさせて尋ねる。何を期待してるんだかι
「めげなくなった」
「なんだよ!それ!」
もう!って、軽く膨れる。その袖を軽く引っ張って抱き寄せる。
「…何//?」
ポスンっと納まって。
「…いや」
俺の背中に回される、ツナの優しい手
二人の間の見えない距離
今はもうない。
━━━
でもリボーンは一目惚れですよ!気付いてないだけで(笑)