短編小説A
□『体育祭をしよう』
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「なんでこんな格好しなきゃなんないんだよ!?」
パン、パパン!
高く澄みきった秋晴れの空の下、花火の乾いた音と共に綱吉の絶叫が響き渡った、絶好の体育祭日和。
◇ ◇ ◇
早朝から電話で黒川に呼び出された。
ただでさえ朝の早い体育祭の教室、誰かいるだろうとは思っていたが、まさかこんなに女子がいるなんて!
(Σひぃい!なんだってんだよ一体ι)
何故かオレは女子たちに囲まれてジリジリと窓際に追い詰められていた。
「だからっ、あんたの協力次第でA組連合の士気が変わるのよ!」
「いや!何言ってるか全くわかんないんだけど!?」
「わかんなくてもいいのよ!とにかく欠員が出たの。ちょうどいいからあんたにはピンチヒッターになってもらうわ」
(ちょうどいいってなんだよ!!)
「ごめんね?ツナくん」
なんて申し訳なさそうな京子ちゃんの顔に反して、鬼のような形相の黒川の顔。
(それに)
チラっと見る。
京子ちゃんはともかく、他の女子は絶対面白がってる━っ!!
ふふふふふ(笑)
(その妖しい笑いはやめろっ!)
ひぃぃい!オレの心の悲鳴はまさに虚空へと消えた。
◇ ◇ ◇
パン、パパン!
「10代目、どうかなさったんですか?何か憔悴しきってらっしゃいますが…」
普段のブレザーでもなくジャージでもなく、男子たちは丈の長い学ランに身を包み、額には赤いハチマキ、手には白い手袋をして。
(━…ちくしょう!かっこいいなぁ、皆)
「なぁ、ツナの学ラン、随分デカくねーか?」
山本がポンっと背中を叩く。
「…うん、放っといて山本」
(オレ今人生のワビ、サビを達観してるのιはは…)
「次、応援合戦っスよ!10代目!気合い入れて行きましょう!!」
決戦で他の組に負けるような事があっちゃあボンゴレの名折れっスからね!なんて。
(わけわかんないんだけど獄寺くん)
しかし接戦なのは本当だ。
ここまでの成績は、A組は獄寺くんや山本、お兄さん達が活躍して点を稼いでるが、惜しいことにあと少し点が足りない。
「C組、粘ってんなぁ」
ダメツナとしては出来る所では協力したいと思ってはいるけど、いまいちその成果は目に見えて芳しいものではなくι
チラリと女子の方を見る。
(うわぁぁあι目が血走ってるよ。ギンギンだよ皆、こ、怖…っ!)
よりにもよって、今年の優勝クラスには、冬休みの宿題50%カットがかかってる。
(━…やればいいんだろ!やれば!!)
オレは焼けっぷちになって学ランのボタンに手を掛けた。
『さぁ、次はA組の応援合戦です!気合いを入れてもらいましょう━━…!???』
どわぁぁあ!!っと黄色い声が上がった。
アナウンスと共にブチブチブチっと学ランのボタンを外して行く綱吉。
「Σぎゃ━━ッ10代目ハレンチです━━!??///」
「おぉお!可愛いーのなー//」
現れたのは、真っ赤なチアの服に身を包んで、黄色いボンボンを手にした綱吉だった。