短編小説A
□『バレンタイン攻防』
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「バレンタイン? ビアンキ、チョコ作ってるの?」
匂い“だけ"は甘くて美味しそうな香りに釣られ台所にやってきたオレは、中で手作りしている母さんとビアンキを交互に見る。
(あああιビアンキ…いかにも『何か怪しくね――!?』的にブショァァアッ!!とドスピンク色に煙を上げてんですけど、それチョコですか――っ!??)
「そうよ、バレンタインは女の子の一大イベントだもの。女は勝負に命を掛けるのよ」
ポっと、頬を染める。
「ふ…ふ〜んιιι」
(リボーンも気の毒に…
はっ!! てかアイツっ!)
『俺は旅に出るぞ』
Σ逃げた―――っ!??
先刻出掛けた小さな姿を思い出し、がーんっとなる。
(誰が食べるんだよコレ!!)
かくゆうオレも、ビアンキがキッチンに居る間は、普段なら近寄らないんだけど今回は…下心もあってι
「…母さんも作ってるんだね」
カシャカシャと泡立て器の音。
「そうよ〜♪お仕事で頑張ってるお父さんに送るんだもの//」
こちらは見た目も美味しそうに出来上がっている。
「………ふ〜ん」
立ち去ろうとしないオレに、母さんとビアンキの視線が注目する。
「ツーくん?」
「ツナ?」
思い切ってオレは顔を上げた。
「あ、あのさ、オレにも出来るかな? 簡単なのでいいんだけど…」
その言葉にキョトンとして顔を見合わせる母さんとビアンキ。
「Σいやそのッッ!誰かにあげるとかじゃなくてっ!おいしそうだから自分でも作って食べたいな!って!ほら簡単そうだし…っ//」
(ひぃぃぃい!変だったかな!?男が『作りたい』なんて!)
「別にその…っ!他意はなくてッ「いいんじゃない?」」
ゼハーっと息を吐くオレに、何でもないようにビアンキが告げた。
「イタリアでは感謝の気持ちに男が花束を贈るものよ。照れる事はないわ」
(きっと隼人にあげるのね…真っ赤になって可愛いわ)
ビアンキにとって隼人の幸せは一番なのだ。
「…自分で、食べるんだよっ//」
「そうね、自分で、ね」
「いらっしゃい?ツナ」
クスリ、笑って二人は手招きした。