短編小説@
□『胡蝶夢』
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(一体これは━━…)
ハァ、ハァ
(どういうこと、だ!?)
目の前に在るのは幸せな悪夢、過ぎ去った過去の記憶。
懐かしい、10年前の並盛。
「━…10代目っっ」
ハァ、走っても走っても
そこかしこに、貴方の、記憶━…
(━…気ガ狂ウ…!)
いや、自分はとうに狂っているのではないか?
愛おしく大切で、大切で大切で…何物に代えても、守りたかった貴方…
貴方を失ったのに、何故自分はこうして生きている?
(違う…!!)
あの時自分は森の中で、貴方の傍に行こうとして、そして━…
出逢ったのだ。10年前の貴方。何も知らずに、不安そうな瞳で…
ふと、思い至る。
足が、先程自分が出現した場所へ急ぐ。
(まさか、そんな!ま、さか、そんな━…!)
息も絶えつつ、慣れ親しんだ10代目の家の門を開ける。
「きゃあ、だっ誰!?貴方━…!!」
奈々の声がするが、構わず二階を目指す。見慣れたドアを開ければそこには━…
「…獄、でらぁ?」
ランボが舌っ足らずに話かけてくる。
「変なの…ツナねぇ?動かないの、これ、ツナだよねぇ?」
「━…うっ…ワァアアアアアアッッ!!」
どこまでどこまでどこまで堕ちれば、貴方に逢えるんですかッッ!
(殺してくれ……ッッ)
残酷なのは現実だ!
過去がなんだというんだッッ!
俺は永久に貴方を失い、もはや心は流れる血を癒す事を放棄して━…
冷たくなった貴方を掻き抱く。返されない手も開く事のない瞳も哀しくて。
涙が出る、涙が、止まらないんです━…
『…後を追うのは、許さないよ』
ねぇ、もし君が死んだら、オレは…オレは、きっと気が狂う。でももうオレは自分だけのものじゃ、ない、から…
だから、心は、君と逝く。オレの心は、君と在る。身体は残っても…君と。
ねぇ…?だから
『君も、生きて』
ガタンッッ
物音にハッとして振り返る。
「あっあなた…誰?その方…ツ…ツナ…?」
洗濯物が入ったカゴを落として、ドアの外から奈々が呟く。
「…お母様」
面差しが、過去のあの人を思い出させる。
不安げに、揺れる瞳で俺を見つめて
『あの、…ここはどこですか?オレ、どうして…』
━…では、では俺は、貴方の為に生きましょう。10年前の愛しい貴方。貴方を守るために、生きましょう。
ギリリっと唇を噛んで獄寺は静かに告げる。
「…至急、家光氏に連絡を。
本国と、連絡を取らなければいけない」
もはや5分は過ぎている。バズーカの、故障も考えられる。急がねば!出来うる限りの事をするのだ!
そうしたら、そうしたら━…
(…『貴方』の許へ、行っても、いいですか?)
愛しい貴方に口付けと忠誠と、永遠の愛を。
この幸せで残酷な、過去という名の檻の中で、貴方の為に戦いましょう…?
《そうして俺は、奇跡と出逢う》
━━━━━━━
『奇跡』は綱吉です。獄寺は彼の綱吉と出逢えるはずです!
私はツナたちを未来に送ったのは、他ならぬ綱吉だと思ってますから(>_<)!
謎は天野先生に解いてもらおう(←おいι)