短編小説@

□『桜残像』
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貴方が笑う 花のように

 † † †

「おーい、獄寺くんこっちこっち!」
遠くから小走りに駆けてくる俺を、貴方が見つけて呼び掛ける。
花のような笑顔で。

「すいません10代目、遅れっちまって」
息を切らしながら謝る。畜生、途中で変な奴等に絡まれなかったらこんな失態!

「大丈夫だよ。さっき始まったとこ」

満開の桜並木の花の下。
すでにジュースで出来上がっているかのような山本が、
「よぉ、獄寺ぁ、寿司食うのなー?」
ご機嫌で肩をバンバン叩いてくる。ウゼッ!

「あー!ランボさんはその赤いの食べるんだもんね!」
「☆*◇△◎×(ランボ、ダメ)」
あー…ウルサイウルサイ!!

獄寺くんもこっち来て座って?って10代目に言われて、喜んで隣に座ろうとした時、

「遅かったじゃないの、隼人」

不意にグキっと顔を向けられて吐き気が襲う。
「あああ姉貴ィ!?Σげふぁっ」

「あぁ!!獄寺くん!?獄寺くーんっ!」

途端意識が混濁する。遠くで10代目の声がする。なんだよこれ情けねぇ、10代目、じゅー代目ぇぇ。


「…大丈夫?獄寺くん」

濡らしたハンカチを額に当ててくださる、優しくて暖かい手の感触。

「…面目ないっス、スイマセン」
ヒンヤリとした心地よさを感じながら、自分の不甲斐なさに呆れ果てる。あれしきのことで、なんだってんだよ俺の身体はよι
皆から少し離れた場所で、俺の体調を気遣って下さる、10代目に申し訳ない。

「10代目、皆の所に戻って下さい。俺、大丈夫っスから」

「うん、でもね?」

上を見上げる10代目。
俺と10代目に花びらが舞い落ちる。雪のようにひらひらと。

「桜はここでも見れるし、…何より君と見たいんだよ」
えへへ、と照れたように小さく笑う。花のように。

俺は目頭が熱くなる。この美しい人が、俺の大切な人。
雪のような花にまみれて二人で寝転ぶ。

「ねーぇ?獄寺くん、来年も再来年も、また皆で桜、見に来れたらいいね」
ふふふっと俺の方を向いて笑い掛けてくださる。

「10年後も、20年後も、ご一緒しますよ?」

手を繋いで横になる。楽しみだね、と貴方が笑う。

楽しみだね、うれしいね、ありがとう 好きだよ

…花のような笑顔で、貴方が笑う━…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺はガクリと膝をつく。
白い雪のような花々に囲まれて、眠るような貴方を前に。

「じゅ…代、目。じゅー、代、目」

拳を地面に叩きつけながら、声を立てずに、嗚咽する。

花の香り、貴方の声、
花のような貴方の笑顔

ずっとずっと、一緒に見ようね
 
…約束━…
 
 
━━━━
 
桜のイメージが儚げ、で、こうなりました。桃の花見とは違う感じ。
 

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