短編小説@
□『秘しても香る花の如く』
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「何?呼び出して」
カタンっと廃墟の錆れた椅子を引いて腰掛ける制服姿。
「クフフ、連れないですね。そんな態度がまた魅力的ですが」
その姿を眼にして妖しく微笑む人物もまた学生。
「…相変わらず変態だね」
† † †
「どうです?彼は」
クフフと、お茶を注ぎながら尋ねる。
「相変わらずだね。忠犬どもと群れてるよ」
カチャン、と湯気の立つカップを持ち上げる。
甘い香りがたちのぼる。少し眼を細める。
「貴方でも、落ちないんですね」
「…何が言いたいの」
「協力しましょうと、言ってるんですよ」
隣に周り込み、肩に手をまわす。
「願い下げだね」
パンっと手を払い、まるで埃を祓うように肩を叩かれる。
(やれやれ、ですね)
「何故です?僕も貴方も、同類ですよ、無い物ねだりの哀れな生き物。所詮、人として生きられない。
…彼が欲しいのでしょう?人となるために」
「一緒にしないで。僕があの子を手に入れたいのはそんな理由じゃない」
キツく睨む。カチャリと音を少し立ててカップを置く。
「自分に無いものを、埋めようとする、本能ですよ」
別に僕は不完全であることを悲観しているわけじゃないのですが。
(欲しいじゃないですか、あの瞳、あの焔)
クフフと、妖しい笑みが浮かぶ。
「違うね、純粋な愛情だ」
そっぽを向く。
「では、貴方は何故ここにいるんです?」
ギシリと椅子に縫い止めるように覆い被さる。
「同病、相憐れんで、いるんですか」
上から見下ろす、少し哀しげな表情。
(気付いて、ないの?)
君だって、僕と同じだ。僕が好きなんだ。そんな表情をするくせに、
「憐れむ気持ちはない。君が分かってないだけ」
それが気にくわないと睨み返す。
叶うかわからない望みを抱えてる。それは人として当然じゃないの?憐れむことなんてない。
「…何を言っているか、わかりません」
そのまま口付ける。深く。
「ん…」
漏れる吐息。
「『人間』に、なりたいのではないのですか?」
「もともと『人間』だよ、僕は。…君も」
「…では僕たちの関係はなんですかね」
制服のタイを引いて、歯でシャツのボタンを外していく。
「差詰め、共犯者だと思っていたのですが?」
白い喉元に、散らすように紅い華を咲かす。
「気まぐれだよ。けど、君の手を借りるつもりはない。僕は自分の力であの子を手に入れる」
「『僕』は?」
視線を絡める。
「君と、堕ちるつもりはない」
長い睫毛に伏せられて影が落ちる。
「…救ってくださると?」
ギシリと脚と脚の間に割り込む。
「神様にでも、頼みなよ」
咬みつくようにキスし返した。
「では、貴方だ」
霧が雲から派生するなら―…
(綱吉━…)
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ヒバリがツナを好きなように、骸はヒバリが好きなんだけど、骸当人気付いてないという話。ヒバリは気付いてますが、気付かない骸が気にくわない、と。
解説してしまいました。すいません(^_^;)