短編小説@

□『父帰る』
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「ただいー…」

家の門扉をくぐると、庭に はためくたくさんのツナギやももひき、シャツが見えた。

(━━…まさかっ!)

「父さ…っ」
脱兎の如くドアを開けて中に駆け込めば、玄関で待ち伏せたように羽交い締めにされた。

「よぉー!!我が息子!!元気だったかぁあ!?」

Σぎぇぇええ!?汗臭っ!!
(やっぱアンタかーっっ!!)

綱吉は久方ぶりに見る父の姿に唖然として目眩を覚えた。




 ◇ ◇ ◇




「久しぶりだな家光」
「よぉ親友!息子が世話になってんな」

「何しに帰ってきたんだよっ!」
「かーっ!つれないねぇ、久しぶりにあったのに、父ちゃん泣いちゃうぞ〜」

(勝手に泣いてろ!!)
「大体『向こう』はどうしたのさ!平気なの!?」
そう、この男にはボンゴレ門外顧問と言う裏の顔がある。
綱吉にはそれも気に入らない。
(母さんに黙ってそんな危険な仕事!)

でも最早自分も同じなのだ。マフィアに関わってしまっている事、母さんには決して言えない。

「向こうは大丈夫さ、優秀な部下が大勢いるもんでね」

ニカッて笑われて綱吉は溜め息をつく。…あんまり聞きたくない話だ。
はぁ〜あ。

「ツっくーん!母さん買い物行ってくるわねぇ♪今日はご馳走よ〜♪」

「あ、はーい」
階下から弾む奈々の声、仕方ないか、こんなんでも父親だもんな。

制服を着替えていると、家光に話し掛けられた。

「よーし、じゃあ飯まで父ちゃんと風呂でも入ろーぜ!ツナ!」

「はぁ!?嫌だよいい年して!何で一緒に風呂なんか入らなくちゃいけないのさ!」

流石に同性とはいえ親と風呂に入るのなんて恥ずかしい年頃だ。しかもこの親父は年から年中家を空けていて、綱吉としてはどう接していいのかも躊躇うほどなのに。

「そんなこと言ったら父ちゃん泣いちゃうぞ〜」
なんて、本当に顔を覆ってサメザメとする振りするから、ウザくてたまんない。
(本当にこの親父がボンゴレNo.2かよ)

「ウゼぇからツナ、行ってこい」
あまり表情の変わらないリボーンの眉がちょっと上がる。

「あーもお!分かった!分かったから泣き真似は止して!」




 ◇ ◇ ◇




本当に何しに帰って来たのやら。
狭い風呂に男二人で入る羽目になるなんて、なんだかなぁ。

「…9代目は元気?」
それでも気になっている事を聞いた。あの優しそうな『お祖父さん』を傷付けてしまったのは自分だ。
すごく気になっていた。

「大丈夫だ。あの方だってボンゴレの9代目だ。柔そうにみえて、実は計り知れない」
なんたって父ちゃんの上司だからなー。

…何だろう、凄く嬉しそうだ。

「…ねぇ、思ったんだけど、10代目って、父さんがなってもいいんじゃないの?同じ血統で、オレなんかよりよっぽどボンゴレに詳しいし、相応しいんじゃ…」

「内部的に問題が出る。父ちゃんはもう『門外顧問』と言う立場にいるし、派閥も出来上がってるからな。心良く思わない連中だっているさ」
ふぃー、っと湯船に浸かりながらノンビリと答えられる。

そうかな?見知らぬ日本人のこんなガキが、急に10代目候補として名乗り出る方が、混乱を招くと思うけど。

「それに父ちゃんは、9代目に使えてる自分が好きなのさ。あの方が俺の忠誠を尽くす御方だ」

「ふぅん」
獄寺くんみたいな事言うんだな。嬉しそうな顔して。


 
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