拍手小咄
□D
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【10年後骸ツナ】
耳に残るお前の妖しい声。
† † †
(…紫陽花の花って不思議だよね)」
いくつもの花が集合して、一つの大きな花を作って。
「色も、微妙に移り変わって…土壌の性質とか、関係してるって聞いたけど…」
霧のような雨の中、傘もささずに、庭に群生した紫陽花の花弁に顔を寄せる。
「…あまり近付くと、濡れて汚れてしまうんじゃないですか?」
クフフ、クフフ、フフフフフ
誰もいなかった筈の背後から、妖しい笑みと共に二本の腕が伸びてきて、綱吉の腰と細い首に手が回る。
「…もっとも、汚れた君も美しい…」
スウッと、背中から回された細い指が、喉を絞める。
首筋に掛かる息遣いと、滑り、探る細指
「フフ…出来れば僕のこの腕で、このまま貴方を汚してしまいたいのですが」
「残念…お前になんて、もったいなくてあげれない」
焔を纏い、フワリと浮かぶその笑みに、両手を軽く挙げて降参する。
「おや…つれないですね。すでにこの身は貴方の焔に乞い焦がれ、妬かれているというのに」
しっとりと濡れて艶やかな花弁。
「…その身体は、お前のものじゃないだろう?」
輪郭がボヤけて、不自然に消え失せ、また別の形を形成する。
バサリと大きな翼をはためかせ、現れたのは梟。
「…お前のご主人様は相変わらず慇懃無礼だね…」
(全く…お前ときたら、クロームや、犬や千草が待ってるだろうに…)
ふぅ、溜め息をつく。
「…早くおいで?」
移り気な花。
本当の色は、どこにあるの?