拍手小咄

□D
1ページ/1ページ


【10年後骸ツナ】






耳に残るお前の妖しい声。


 † † †


(…紫陽花の花って不思議だよね)」

いくつもの花が集合して、一つの大きな花を作って。

「色も、微妙に移り変わって…土壌の性質とか、関係してるって聞いたけど…」

霧のような雨の中、傘もささずに、庭に群生した紫陽花の花弁に顔を寄せる。





「…あまり近付くと、濡れて汚れてしまうんじゃないですか?」


クフフ、クフフ、フフフフフ


誰もいなかった筈の背後から、妖しい笑みと共に二本の腕が伸びてきて、綱吉の腰と細い首に手が回る。

「…もっとも、汚れた君も美しい…」

スウッと、背中から回された細い指が、喉を絞める。
首筋に掛かる息遣いと、滑り、探る細指



「フフ…出来れば僕のこの腕で、このまま貴方を汚してしまいたいのですが」

「残念…お前になんて、もったいなくてあげれない」

焔を纏い、フワリと浮かぶその笑みに、両手を軽く挙げて降参する。

「おや…つれないですね。すでにこの身は貴方の焔に乞い焦がれ、妬かれているというのに」

しっとりと濡れて艶やかな花弁。

「…その身体は、お前のものじゃないだろう?」

輪郭がボヤけて、不自然に消え失せ、また別の形を形成する。
バサリと大きな翼をはためかせ、現れたのは梟。



「…お前のご主人様は相変わらず慇懃無礼だね…」

(全く…お前ときたら、クロームや、犬や千草が待ってるだろうに…)

ふぅ、溜め息をつく。

「…早くおいで?」




移り気な花。

本当の色は、どこにあるの?


 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ