ツナ受け長編小説
□『修学旅行へ行こう!』
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初日は学年全体行動だ。新幹線に乗り新神戸より三宮を目指す。
「異人館…だっけ?今日」
「うん。でも明日のクラス別も神戸なんだよね。他のクラスは明日から奈良もあるらしいよ?」
はい、ツナくんってお菓子を渡されて、何だか照れちゃうな。
新幹線に乗った途端、ヒバリさんは離れた指定席に移ってしまった。やっぱり人の多いのが嫌だったらしい。
(…バスの中では、優しかったな)
昨日寝不足だったせいで、バスに乗って早々オレは寝てしまったらしく。
気が付くとヒバリさんの肩を借りて熟睡していたんだ。
「Σうわっすいません!」
恐れ多くて平身低頭で謝ったら、
「別に謝ることないじゃない」
って逆にムッとされてしまった。うーん、何だかな。
「ツナくんの番だよ?」
新幹線の中ではUNOなんて始まって。
「それにしてもこの班、ちょっと悪目立ちしてるよ?」
って言うのは黒川花。
「悪目立ち?…あー」
…何となく察する。我が校のアイドル京子ちゃんに、人気者の山本、不良っぽいけど格好いい獄寺くん。
さっきから通路を行ったり来たりする他クラスの人たちのヒソヒソ話は、きっと気のせいじゃない。
そう言えば新幹線の中で夏服に着替えた時(と言っても上のベストを脱ぐだけなんだけど)、女の子の一足早い夏服姿にドキッとしたなぁ。あの時も皆こっちをチラチラ見てた気がしたっけ。
「あんたもね、沢田」
「は?」
何でオレ?…あー、問題起こしてばかりだからか?でもそれって一概にオレのせいばかりじゃないんだけど。
ハァって溜め息ついて黒川が続ける。
「…わかってないようだから言っておくけど、アンタ最近、美人オーラ出てるよ?」
「……はぁ!??」
美人オーラ?一体何の事!?意味わかんない。
そこへ降る聞き慣れた声、
「10代目〜!飲み物買ってきました!」
「あ、ありがと、獄寺くん」
山本も女の子たちに飲み物を渡して、
(紳士だよね)
くすくす、笑みが漏れる。
わかってないなぁ、と花は思う。こないだの事があったからじゃないけど、よくよく見れば、沢田は美人顔なのだ。
くすくす笑いながら伏せた瞳が開く動作だけで、男どもがやられてるよ?
(無防備にも、程があるよ、沢田はι)
チラッと京子を見る。この子もわかってんのかな?
まぁ、何があっても京子の味方であることは変わらない。親友、だからね。