ツナ受け長編小説
□『修学旅行へ行こう!』
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「わぁ、気持ちいーい」
船に乗ってちょっとした港神戸ミニクルーズ。
40分の手軽なコースだ。
「京子ちゃん、乗り出さないでねっ」
さっきの自分を棚にあげて忠告。まぁ多目に見てよ。
「大丈夫だよ、ツナくん心配症」
砂糖菓子みたいにフワフワ笑う。そこに居るだけで周りが明るくなる。
京子ちゃんは天使だ。
「獄寺くんたちは?」
「向こうで女の子に捕まってる」
人気者はつらいよね。なんて、ちょっと自分のことのように自慢かも。へへっ。
仲良いんだねー、って京子ちゃん。
「ツナくんは変わったね」
甲板から身を乗り出すように、遠くを眺めてポツリと京子ちゃんが言う。
「え?オレ?変わったかな。どんな風に?」
「うーん…綺麗になった」
ガクッなにそれ?
「自信がそうさせるのかなあ?」
「自信なんてないよ。あるように見えるとしたら、それは皆のおかげ」
オレ一人だったら何も変わんなかった。リボーンが来てから全てがハチャメチャで、怖いことやツラい事もたくさんあったし。
でも少しずつ仲間が出来て、初めての友達や守りたいと思わせる存在…
相変わらず弱虫のオレだけど、この人たちのためなら強くなりたいって思ったんだ。
それは覚悟、かな。
「10代目ぇ!」
呼ばれて振り返る。ちょっとごめんね?って言いながら駆け寄って行く。
「…男の子は、すぐ成長しちゃうから、女の子は置いて行かれる気分になるのよ?」
風を感じながら一人呟く。
獄寺くんと山本くんと一緒に居るときのツナくんはすごく幸せそうで、私やハルちゃんはたまに寂しくなるの。
(でもそんなこと言わない)
「いいなぁ」
隣で一緒に戦える男の子はいいな。女の子は負担にならないよう頑張るしかないじゃない。
「…ずるい、なぁ」
でもせめて、今だけ。
あなたが仲間だと思って大切にしてくれるのが分かるから、わたしも今はそれに甘えていいですか?
青い青い空と海に囲まれて、まだ成長途中の思いが、皆。
髪をなぶる風が吹いて。
「京子ぉ!」
「花」
呼ぶ声に私も答えて走り出した。