妄想小説 

□潜入 ティキリナ小説★完結
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「あの…すみません」
「ん?なんだいお嬢さん」
リナリーはもじもじとしながら白衣を着た男の顔を見上げる。
「あの…いつもの…先生はみえないんですか?」
メガネをかけた不精ひげの男はポリポリと頭を掻きながら口の端にニッという笑みを浮かべた。
「残念だけど…今はいないな」
「そうですか……」
熱のためか、ボーッとした頭でリナリーは頷いた。
「じゃぁ、後でまた来ます…」
「お嬢さん!!!!!」
その場から立ち去ろうとしたリナリーを男は呼びとめた。


「どうしたんだ?風邪かい?」
「……はい」
「はいりなさい。風邪ぐらいならオレでもどうにかなるだろう」
「いいんですか?」
「何を遠慮しているんだ?病人の面倒を診るのがオレたちの仕事なんだ。病人を帰すわけにはいかないからな」
医務室の入口で戸惑っていたリナリーのために男は入口を大きく開けた。
「ほら、入りな」
男に勧められるままに、リナリーは医務室の中に入った。


男はリナリーを椅子に座らせると、白衣と聴診器をつけて戻って来た。
「じゃあ、診察を始めようか……」


■■■■■


「はい、大きく息を吸って…吐いて…」
リナリーは恥ずかし気に団服のボタンを外した。
男は聴診器をリナリーの真っ白な胸に当てる。
ヒヤッとする聴診器の感触にリナリーはビクッと身体を震わせた。
「はい、いいよ。症状は咳と寒気だけだな」
「はい…そうです」
「後、倦怠感もあるみたいだな」
「はい…」
「他には何かあるかい?」
「……たぶん、大丈夫です」
カルテに柔らかく整った文字が書き込まれていく。
ちょっと派手な外見に似合わず、几帳面な字を書くんだとリナリーは男の手元をボーッと眺めていた。
「んー風邪だな。薬3日分……、なんだい?」
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