魔法少女リリカルなのはStrikerS

□第二話 「戦闘」そして……
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刹那「新しい土地。新しい生活。様々な思いを抱きながら訪れた地で起きた、突然の事態。目覚めた力。それがどんな意味を持つのか、今はまだ知らぬまま……

魔法少女リリカルなのはStrikerS 始まります」

 魔法少女リリカルなのはStrikerS
 第二話 「戦闘」そして……

 さて、どうしたものか。
 変質した世界で、子供の玩具じみた何かと対峙しながら、姫宮刹那は思った。
 アイオーンを起動させれば『あれ』を何とか出来ると聞いてはいるものの、実の所、自分が一体何が出来るのかを全く分かっていなかった。
「アイオーン」
『はい、何でしょうか』
「今の俺は何が出来る?」
『精神を集中してください。そうすれば、今の陛下に最適とされる魔法が選出されます』
「集中……」
 目を閉じる。
 視覚。
 聴覚。
 触覚と言った五感を一時破棄。
 意識を外ではなく内側へと向ける。
 そして、
「………!」
 唐突に理解した。
 否。させられたと言うべきだろう。
 意識が完全に外から内へと移った瞬間、今まで知り得なかった情報、『魔法』に関する知識が頭に流れ込んで来たからだ。
 目を開ける。そして、
「アイオーン」
『はい』
「一撃で決めるぞ」
『イエス。マイロード』
 目前のアンノウンへと駆け出した。
 『あれ』が眼を向ける。
 胸部を赤い光がポイント。
 しかし、それから逃れようとはしない。真っ直ぐに『あれ』へと走る。
 『あれ』が青い光……レーザーを放った。それを手にした剣で弾き返す。
 驚く程体が軽い。
 『あれ』が続け様にレーザーを撃って来るが、その悉くを剣で弾き、疾走する。
 今なら分かる。
 『あれ』は弱い。
 『あれ』が自分を打倒し得る事など有り得ない。
 そんな程度の相手を恐れる道理など、何処にも無い!
「アイオーン」
『ロード・カートリッジ』
 六連装の回転式弾倉……カートリッジ・システムが起動し、歓喜の咆哮を上げる。弾倉が回転し、弾丸を一発炸裂させた。

 ―――――――カートリッジ・システム
 儀式によって収束、圧縮した魔力を弾丸に込め、それを炸裂させる事で、瞬間的、爆発的に術者の魔力を増大させる。
 が、反面、体への負担はロードする数が多ければ多い程増し、更にはデバイス本体の破損を招く危険もある。

 アイオーンにブーストした魔力を込める。すると、刀身部から白い光が溢れ出て、同色の刃を形成した。
 脚力を魔力強化し、跳躍。
 眼下、『あれ』がひどく緩慢な動作でこちらを向く。
 だが、もう遅い。
「光牙―――――

 剣を振り上げ、

        ―――――一閃!」

 渾身の一撃を叩き込んだ。
 斬撃を受けた『それ』は、光の刃によって両断され、爆散した……

       ※

 アンノウンの撃破を確認すると、ふぅとため息をついた。
『お疲れ様です。陛下』
 アイオーンが労いの言葉をかける。
 しかし、疲れた。慣れない力、『魔法』の行使とはこれ程までに疲れる物なのか。
 正直、このまま倒れて寝てしまいたい。
 そう思った瞬間、
『陛下!』
 アイオーンが切迫したような声を上げた。
「何だ?」
『周囲に動体反応。先程の物と同タイプ。数は―――――

 ―――――瞬間。
 体中がポインタの赤で塗り潰される。

                         ―――――約七十です』
 絶望的なまでの数の敵が、周囲を取り囲んでいた……

       ※

 other Side−???−

 それは、あたかも彗星のようだった。
 背に尾を引くのは桃色の光。
 胸に抱くは不屈の心。

 速く。
 ―――速く。
 ―――――速く。

 彗星が行く。
 風を切って。
 風になって。
 黄昏の空を、彗星が行く。
 そして、

「見つけた……」

 眼下の大地を見下ろす。
 その瞳に映るのは、大地を蹂躙する災厄の軍勢。
「さあ、やるよ。レイジングハート」
『分かりました。マスター』

 不落の天使が、不屈の心を手にして空を行く。
 黄昏の空を……

 other Side−???−out

       ※

「……っ!」
 アイオーンを正眼に構える。
 どうする?
 魔力はまだある。体力は少々心許ないが、戦えはするだろう。しかし、
「………」
 いかんせん数が多すぎた。
 一体、一体は大した物ではない。それは先の戦闘で実証されている。
 だが、七十体を一度に相手にするのはどう考えても無理だ。よしんばうまく立ち回れていたとしても、体力が尽きて動けなくなってしまうと終わりである。
 更に言うなら、今自分が使える魔法は先の『光牙一閃』―――――魔力付与型斬撃魔法しかない。
 そして、これは斬撃である以上、相手に近づかなければ効果は無く、また、発動の際にはカートリッジを一発使用しなければならない。
 アイオーンのカートリッジ・システムの装弾数は六発。先程の戦闘で一発使ってしまったので、残りは五発。
 予備弾倉など持っている訳が無いため、魔法を満足に使用できるのは残り五回という事になる。
 そして最悪な事に、自分は魔導師として覚醒してから三十分と経っていない、半人前以下の素人であった。
「………」
 僅かに後ずさる。
 こうして思考している間にも、敵はじりじりと包囲を狭めてくる。
「こうなったら……」
 覚悟を決めて敵中に突入しようと、足に力を込めた。
 ―――――瞬間。

『そこの魔導師。そのまま動かないで』

 突如、頭に直接声が響いた直後。

 ―――――轟!!

 周りを取り囲んでいた敵を、桃色の光が飲み込み、そのうち数十体が爆散した。

       ※

『攻撃成功。二十三体を撃破』
 レイジングハートの声が空に響く。それを聞いて、高町なのはは先端が音叉のような形状をした杖、ミッドチルダ式インテリジェントデバイス<レイジングハート>を眼科の敵へと再び向けた。
「まだまだ。続けて行くよ」
『了解。ディバインバスター、セット』
 音叉の中心にある赤い石に、桃色の魔力光が収束して行き、
「ディバイィィィン―――――

 それが一際輝くと、

              ―――――バスタァァァァ!」

 眼下の大地へ裁きの星光が放たれた。

       ※

 上空から放たれる桃色の砲撃が地上に突き立つ。それは、あたかも天上の神が放つ浄化の光を思わせた。
「………」
 その圧倒的な力に言葉を失う。周りを取り囲んでいた敵は、その全てが薙ぎ払われ無残な残骸と化していた。
「大丈夫だった?」
 ふと、誰かに声をかけられる。声がしたほうを見ると、空からゆっくりと彼女が降りてきた。
「高町……なのは」
「うん。また会ったね、刹那君」
 彼女、純白のバリアジャケットを纏った高町なのはが昼間と変わらぬ笑顔で答えた。
「君も、魔導師だったのか」
「まあね。あっ、怪我とかしてない?一応簡単な治癒魔法は使えるから」
 そう言われてから足をやられていた事を思い出した。
「足をやられた。不思議と痛みは無いが……」
『私が傷を負った部位にダメージリミッターをかけていましたから』
 そう、アイオーンが説明し、『きちんと治療は受けてください』と補足した。
「それがあなたのデバイス?」
「ああ。アイオーン」
『はい。ミッドチルダ式インテリジェントデバイス<アイオーン>です。以後お見知りおきを、ミス高町』
「うん、よろしくね。っと、そうだ。状況の説明、必要だよね」
「そうだな。ぜひそうしてもらいたいが、今日はいろいろありすぎて思考が追い着かない。日を改めさせてもらってもいいか?」
「構わないよ。わたし達の上司……って言うのはあれだけど、その人はいいって言ってたから」
 いつの間に話したのだろうか。まあ、魔法なんて物があるのだ。そういう事も可能なのだろうと納得する。

 ふと、空を見上げた。
 黄昏色だった空は、いつの間にか暗くなっていて、キラキラと星が瞬いている。
 そうして、姫宮刹那の長い一日が終わりを迎えようとしていた……
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