魔法少女リリカルなのはStrikerS

□第三話 「機動六課」
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刹那「初めての戦闘。長い一夜が終わり」
なのは「空に昇った朝日は、新たな日々の始まりを告げる」
刹那「運命の舞台に上がるまで、あと少し……」
刹・な「魔法少女リリカルなのはStrikerS始まります」


 魔法少女リリカルなのはStrikerS
 第三話 「機動六課」


 ♪〜〜♪〜〜♪〜〜
 耳元で携帯が起床を告げる音が響く。それを止めようと手を伸ばすも、未だ惰眠をむさぼる事を願う体の動きはひどく緩慢だ。
 ♪〜〜♪〜
 携帯が響かせる音をようやく止めると、これまたゆっくりと体を起こす。
「………」
 少々低血圧だからか、体は起きても頭だけは未だ夢現だった。その時、
『おはようございます、陛下』
 右手首のブレスレット―――アイオーンの声が聞こえた。
「……ああ。おはよう」
 やや遅れて反応する。
 ようやく目が覚めてきた。
 今の自分の姿を確認すると、記憶が正しければ昨日と同じ服だった。
「ああ……」
 思い出した。昨夜の戦闘の後、あてがわれていた学生寮の部屋まで彼女―――高町なのはに送られると、着替えもせずベットにダウンしてしまったのだ。
 ふと、左足を見る。真っ白な包帯が巻かれているのが見えた。
『ダメージリミッターは作動していません。昨日の治癒魔法が効いたのでしょう』
 すかさずアイオーンが補足する。包帯を解くと少々後が残ってはいるものの、痛みも無く生活に支障は無さそうだった。
「シャワーでも浴びるか」
 着替えをしていないせいか、汗でべたつく体が不快だった。

       ※

「あ、おはよう。昨日はちゃんと休めたかな?」
 シャワーを浴び、制服に着替えてから一階のロビーに降りて来ると高町なのはが声をかけてきた。
「ああ。というより、部屋に入るなりベットにダウンだ」
 これでしっかり休めなければ、その体はどうかしている。
「しかし、この寮はすごいな。部屋は皆個室で、シャワールームまで完備しているとは」
 とても学生寮とは思えない充実した設備だ。
「生徒会メンバー専用寮だからね」
 そう。この学生寮はザンクト・ヒルデ学院総合生徒会専用寮である。総合生徒会というのは、学院の小、中、高、大全ての学年から選抜された生徒からなる、学院自治体だ。
 そして、その設備は驚嘆に値するほどに整っている。
 部屋は全て個室。個人用の端末やシャワールームを完備。さらに、部屋はカードロック形式でセキュリティは完璧。一階には広々としたロビー。そして、誰が考えたのかは分からないが大浴場まで備わっている。
 正直至れり尽くせりだ。
「ねえ、刹那君」
「ん?」
「今から学院に行くけどついて来てくれる?」
「?構わないが、まだ登校には早くないか」
「そうなんだけど……昨日の説明とかしたいから」
 なるほど。その話か。日を改めて欲しいと言ったのはこちらだったし、早めに済ませておくのに越した事は無いか。
「ああ、分かった。行こう」
 こうして、なのはと共に寮を後にした。

       ※

 なのはについてやって来たのは、校舎から少々離れた所にある施設だった。
「ここは?」
「生徒会専用の特別棟。生徒会室とかがあるのはここなんだ」
 そう言って、なのはは中へと入っていく。それを追ってしばらくすると、とある部屋の前で立ち止まった。
 「会長室」とプレートで表示されたドアの前で、備え付けられたインターフォンのボタンをなのはが押す。
『はーい、どちらさん?』
 インターフォン越しに聞こえて来たのは、妙に訛りの入った女性の声だった。
「なのはだよ。昨日言ってた彼、連れて来たよ」
『おー、そかそか。入ってえーよ』
 そう言った瞬間。目の前のドアが開く。中に入ると、そこには一人の女性が書類に囲まれた机に着いていた。
「はじめまして。姫宮刹那君やったか?うちがザンクト・ヒルデ学院総合生徒会会長の八神はやてや。よろしゅうな」
「姫宮刹那だ。よろしく」
 軽く自己紹介をしてから、八神はやてと名乗った女性を見つめる。
 肩程で切り揃えられた茶髪。その右側に赤いリボンがクロスするように添えられている。黒い瞳。十分美人といえるその顔は、柔らかい笑顔で飾られていた。
「それで、生徒会会長と言ったが、生徒会と昨日の事にどんな関係があるんだ?」
「そやなぁ。簡単に言うと、この学院の生徒会は『あれ』の対策のために設立された組織なんや」
「何だと?」
「その経緯についてもちゃんと説明するよ」
 八神はやての説明を纏めると以下のような事だった。
 この世界に魔法は実在する。元は遥か昔。旧暦の時代にあった技術であり、自分たちはそれをサルベージして使っていると言う。
 魔法の使用には魔力と言う精神的なエネルギーが必要であり、資質を持っている人間は世界各地に存在する。
 そして、魔法の存在を知った者の中には、その力で犯罪を犯す者もいる。そんな普通の法では裁けない犯罪者を検挙している組織が非公式に設立された。それが、
「管理局?」
「そうや。魔法を使った犯罪を防ぐ、軍と警察と裁判所が一緒になった組織って思ってもらえればええよ」
 そして、管理局の任務には、犯罪者の検挙以外に重要な物がある。魔法が一般的に使われていた旧暦時代。その中で滅んでしまった遺失文明の遺産。『ロストロギア』の総称で呼ばれている物の回収である。
 すでに失われてしまった技術の集大成であるそれは、現代の技術では解明が困難な物が多く、その用途は多岐に渡る。その中には、何故あるのか分からないような下らない物もあれば、それ一つで世界を滅ぼせるような物まである。
 そのような危険なロストロギアが、悪意ある何者かに悪用されないために、回収し保管すると言うのが局員に課せられた最重要任務であると言う。そして、
「最近、このクラナガンを中心に、あるロストロギアが関わる事件が起こり始めた。それがこれや」
 そう言って、はやてが手元にある端末を操作すると、一枚のウィンドウが表示された。
 そこに映っていたのは、赤い宝石。鮮やかな真紅のそれは、しかし、血の赤のように禍々しくも見える。
「ロストロギア。通称『レリック』見た目は赤い宝石の形をした高純度の魔力結晶体。使用方法、特性とかは、今の所一切が不明や」
 しかし、近頃になって、所々にそのレリックを研究していたと思われる施設が確認されたらしい。さらに、
「もし、このレリックが何らかの原因で暴走すると、周囲を巻き込んでの大規模な災害が発生する。一番新しい例としては、ミッド臨海空港の火災事故やな」
「まさか、あの事故にレリックが関わっていたと?」
 ミッドチルダ臨海空港大規模火災事件。四年前、首都クラナガン郊外で起きた原因不明の大規模災害。空港施設は全壊。多数の重軽傷者、死亡者を出した事件として、今でも記憶に残っている。
「そうや。そして、それの発見、回収を目的とした物がこいつらや」
 はやてが端末を操作する。新たに現れたウィンドウに映っていたのは、昨夜相手にしたアンノウンであった。
「レリック回収用の自律機械。『ガジェット・ドローン』」
「ガジェット……」
「これらの自律機械が自然発生する事は絶対に無い。悪意ある何者かがレリックを収集している可能性がある」
 そこまで言って、二枚のウィンドウを閉じる。
「そこで、ガジェットの発見例が多いここクラナガンに、管理局が発足した対策部隊。それがうちら『管理局遺失物管理部機動六課』や」
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