魔法少女リリカルなのはStrikerS

□第四話 「ファースト・アラート」
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刹那「選んだ道。新たな日常」
はやて「これから紡いでいく、大切な絆を信じて」
なのは「続いていく道の先へ歩み出す」
刹・は・な「魔法少女リリカルなのはStrikerS。始まります」


 魔法少女リリカルなのはStrikerS
 第四話 「ファースト・アラート」


 Other Side−NANOHA・TAKAMATI−

「はーい。みんな集合」
 早朝。青々と晴れ渡る空の下、高町なのはの声が響き渡る。辺りに広がるのは、高々と聳えるビルの群れ。広く、そして長く続くハイウェイ。栄光の元に繁栄して来た、文明の集合体……だった物。
 延々と連なるビルは、そのどれもが破壊されていて、崩壊しかかっている。ハイウェイも、所々がひび割れていて、いつ崩れるかどうか分からないという有様。
 そんな廃都市の空で、純白のバリアジャケットを身に着けたなのはが、笑いながら佇んでいた。
 その下に、たった今六人の男女が走ってきた。
 青いショートカットの髪に大きな黒い瞳の少女。
 オレンジ色の髪をツインテールにし、同じく黒い瞳に強い意志を持った少女。
 燃えるような赤髪に、澄み切った空のように青い瞳の少年。
 肩を越えた辺りで揃えられた桃色の髪に、藍色の瞳。そして、その傍らに小さな竜を従えた少女。
 背中まで伸ばされた紫色の髪と黒い瞳の少女。
 そして、日の光に照らされて輝く銀髪。氷の刃のように鋭い青みがかった黒い瞳の青年。
 それらが皆、肩で息を吐きながらこちらを見上げる。
 それを見て、ふっと笑うとなのはは声を上げた。

 Other Side−NANOHA・TAKAMATI−out

       ※

「みんな結構疲れてるけど、後一本いける?」
『はい!』
「ああ」
 無残に朽ち果てた廃都市の中心に、機動六課メンバーの声が高らかに響き渡る。
 皆、身に着けているバリアジャケットは煤で所々汚れていて、息も上がっているが、その瞳には強い意志がありありと浮かんでいた。
「じゃあ、今朝の最後。シュートイベーションやるよ。レイジングハート」
『了解。ディバインシューター』
 天上に佇む高町なのはが手にした杖、レイジングハートに声をかけると、彼女の足元にミッド式の円状の魔法陣が展開される。それと同時に、今度は彼女の周囲に桃色の球体、魔力弾が無数に、それこそ数えるのが馬鹿らしい程の数が展開された。
「わたしの攻撃を五分間。被弾無しで回避し切るか、わたしに一撃入れればクリア。一度でも被弾したら最初からやり直しだから、みんな気を引き締めて行こうね」
『はい!』
「ああ」
       ※

『みんな、この満身創痍の状態でなのはさんの攻撃を五分間。捌き切る自信、ある?』
 開始前。思念通話で声をかけたのは、オレンジ色のツインテールの少女。ティアナ・ランスターだった。
『無い!』
『同じくです』
 それにやたらと自信満々に否定の答えを返したのは、青いショートカットの少女。スバル・ナカジマ。
 そして、自信満々ではないが、同様の答えを返したのは、赤髪の少年。エリオ・モンディアルだ。
『それ以前に、この状態であれを捌き切る奴は人間としてどうかしてると俺は思うが?』
『そ、それは……』
『い、言えてますね……』
 俺の言葉に肯定の答えを返したのは、小さな竜を従えた桃色の髪の少女。キャロ・ル・ルシエと、紫色の髪の少女。ギンガ・ナカジマだった。
『よし。じゃあ、何とか一撃入れよう』
 ティアナがそう言うと、皆に作戦を話し始める。そして、
「もういいかな?」
 空からなのはが呼びかけた。
『はい!』
「ああ」
「うん。じゃあ、行くよ!」
 そう言うと同時に、数個のシューターが打ち込まれる。
「全員!絶対回避!」
 ティアナが声を上げると同時に、俺たちは四方に散った。

       ※

 Other Side−NANOHA・TAKAMATI−

 最初に打ち込んだシューターは、目標を打ち抜く事無く地面を穿っただけだった。
 満身創痍の状態で中々にいい反応を見せてくれる。それが嬉しくてふっと、微笑を浮かべた。その瞬間、
「!?」
 自分に向かって青と藍色に輝く帯が発生した。
 ―――――ウィングロード。
 魔力で形成された道を自身の進行方向に向かって展開する魔法。空中に向けて展開する事も可能であるため、空を飛べない陸戦魔導師にとっては、天に羽ばたく為の翼と同義だ。
 それが三方向から自分を囲むように展開されている。つまり、
(多方向からの同時攻撃……)
 確かにそれならば対処し難い分、撃墜出来る確率は上がるだろう。しかし、
(わたしはそこまで甘くない)
 そう、仮にも管理局でエース・オブ・エースと呼ばれているなのはにとっては子供の悪戯に等しい。
 展開されたウィングロードを駆けて来る三つの影。スバル、ギンガ、刹那の姿を確認すると、すぐさまシューターを操作する。その数は三。その一つずつをそれぞれの方向へと発射した。
 その狙いは正確無比。三人は回避出来ずに被弾する―――――筈だった。
「!?」
 シューターが命中する瞬間。三人の姿が、まるで幻のように消え去ったのだ。
 否、それは正しく幻だった。
「シルエット。やるね、ティアナ」
 ―――――フェイクシルエット
 魔力で形成した幻影を投影する幻覚魔法。石などの物体は勿論、人間も投影可能で、実物と同じように移動させる事も出来るが、物理的な衝撃に弱く、魔力消費も高い。
 幻覚魔法は術式の複雑さや、魔力消費の高さから使用している者は少ないが、機動六課メンバーの中でティアナがそれを習得していた。
 なのはが感心するように呟いた時、先とは異なる方向からウィング・ロードが展開される。
「うおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああ!!」
 左右から雄たけびを上げながら、スバルとギンガが腕に装着されたナックル型のデバイス、リボルバーナックルのスピナーを唸らせて突撃して来た。
「っ!!」
 すかさず開いている左手でラウンドシールド。レイジングハートを持ったままの右手にプロテクションを展開させて防御する。
「アクセル!!」
「うわっ!?」
「っ!?」
 そして、先程シルエットを迎撃したシューターを操作し、更には弾速を加速させて二人を迎撃する。それに気づいてすぐさま回避行動に入る二人。
「いい反応だね。スバル、ギンガ」
 その素早い反応に賞賛の声を上げる。
 そこで、ふと違和感を感じた。
 たった今攻撃して来たのはスバルとギンガの二人だった。
 何かが足りない。
 そういえば、先のシルエットの数は確か……
 ―――――ガシャン!
 瞬間。何処からか音が聞こえた。なのは自身も聞き慣れた音。これは―――――カートリッジ・システムの駆動音!!
「!?」
 それに気づいた瞬間。新たなウィングロードが展開された。その方向はなのはの頭上。
「光牙―――――

 そこにいたのは、

        ―――――一閃!!」

 アイオーンに魔力刃を形成させた姫宮刹那の姿だった。
「っ!!レイジングハート!!」
『ロード・カートリッジ』
 すかさずレイジングハートに呼びかける。インテリジェントデバイスであるそれは、自身の主であるなのはの意思を読み取り、カートリッジをロードした。
『プロテクション・パワード』
 カートリッジにより増強されたなのはのプロテクションと刹那の光牙一閃が衝突する。そして、
『バリアバースト』
 間一髪の所で防ぎ切り、自身のバリアを爆破する事で距離を取った。その時、なのはは見た。
 必殺の一撃を防がれ、吹き飛ばされて行く刹那が―――――ふっと笑ったのを。
「!?」
 そして、気づいた。
 この攻防の中、全くアクションを取っていなかった二人の事を……

 Other Side−NANOHA・TAKAMATI−out

       ※

 激しい戦闘の最中。そこから少々離れた所に、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエの二人が居た。
 たった今、二人の目にはバリアバーストで吹き飛ばされた刹那の姿が映っていた。
 ふと、刹那の目がこちらを見る。それを確認して二人は頷いた。
「エリオ君、行くよ」
「分かった。キャロ」
 キャロが手を翳す。
「ケリュケイオン」
『エンチャント。アクセラレイション』
 キャロの手に装着された指ぬきグローブ型のデバイス、ケリュケイオンの桃色の結晶体から、エリオが手にしている槍型デバイス、ストラーダへと光が走った。
 キャロが使用したのは、ブーストと呼ばれる補助魔法だ。
 術者自身の魔力を他者へと分け与え、任意の能力を増幅させる物である。
 チームの中で攻撃力に秀でておらず、また、フルバックというポジションにいる彼女の役割は、後方からの魔力支援に特化していた。
『受諾』
 ブーストを受けたストラーダが答えた。そして、その穂先を空中のなのはへと向ける。
「かなり勢い付いちゃうと思うから、気をつけてね」
「分かった。ストラーダ!」
『エクスプロージョン』
 カートリッジ・システムが起動し、炸裂した薬莢が排出される。穂先の下部からジェット噴射の炎を吐き出した。そして、
『スピーアアングリフ』
 轟音を轟かせながら、天上へと突撃した。
 超スピードでなのはへと迫る。それに気づいた彼女がこちらを振り向いた。
 瞬間。爆音。
 衝突の衝撃で爆煙が巻き起こる。
 そして、その中から飛び出したのは、はたして突撃して行ったエリオだけであった。
「うわあああああ」
 吹き飛ばされたエリオが廃ビルの縁を滑走する。
「ミスった!?」
 廃ビルの中から様子を見ていたティアナが思わず叫ぶ。
 やがて、爆煙が晴れた先に佇んでいたなのはが口を開く。
「おめでとう。見事目標クリアだよ」
「ほ、本当に?」
「うん。ほら、ちゃんとバリア抜けてジャケットまで通ったよ」
 口にされた言葉が信じられず尋ねたエリオに、なのはが自分のバリアジャケットを指して答える。
 指し示された部分には、確かに命中したような後が残っていた。
 なのはが空から降りてくる。
「はい。じゃあ、これで今朝の訓練は終了。次は放課後にね」
『お疲れ様でした!』
 あの激戦の後とは思えない元気な声で、景気よく訓練終了を告げた。
 その時、
「クキュルゥゥゥ」
 そんな、何かの鳴き声が聞こえた。その鳴き声の主は、キャロが引き連れている小さな竜。フリードリヒの物だ。
「どうしたの?フリード」
「ん?ねえ、何か焦げ臭くない?」
 突然訝しげな声を発したフリードにキャロが尋ねた時、ティアナが異臭を察知した。そう言われてから鼻を動かすと、確かに何かが焼けるような臭いがする。そして、
「あ」
 気づいた。
「スバル」
「ん?」
 指差す。
「足」
「足?」
 スバルが指差された自分の足を見る。そして、
「ああぁぁぁぁぁ!!」
 叫んだ。
 スバルの視界に映ったのは、スパークを起こし、煙を吹いている自分のローラー型デバイスの姿であった。
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