「妄想」番外編

それは和輝がエレベーターでキスをされている頃……



side:近衛暁


「今帰った」

俺が生徒会室へ戻ると真っ先に月夜が駆け付けてきた。

「あーちゃんお帰り」

「ただいま月夜」

「結構時間かかったな」

真崎がソファーから起き上がる。
……ちょっと待て、仕事はどうした仕事は。

「真崎、仕事……」

「おっ終わったよそんなの」

「嘘ばっかり」

真崎の横に有紀が立つ。
真崎の手を掴む。

「ほらっ、僕も手伝うから!ねっねっ」

有紀に引っ張られ、渋々という風に立ち上がる真崎。
この二人はいつ見ても仲が良い。
……でもBL補給は出来ないんだ。
“仲が良い”というだけの親友という関係だからな。
妄想で補えるところは補うが……、この二人は、な。
和輝総受けに協力して欲しいし。
うむ、複雑だ。

「あーちゃん、何考えてるの?」

「ん、いやなに、あの二人を今後俺の脳内でどう扱っていくかをだな」

「……相変わらずだね、あーちゃん」

「誉め言葉ととっておこう」

「そういえば、外部生はどうだったんだい?」

今まで黙っていた鏡夜さんが口を開いた。
そういえばそうだ。
俺はそのことを話さなければならなかったんだ。
勿論、俺の計画の為に。
俺は生徒会にいる人を見回した。
月夜、鏡夜さん、真崎、有紀
…………………あれっ!?
会長が、いない。
一番話さなければならない人がいないなんて。

「鏡夜さん、会長はどこに行ったんですか?」

「ああ、洸なら学園長に呼ばれてたかな」

「………………学園長、と今言いましたか?」

「そうだけど……。何かまずかったかな?」

「いえ、問題ありません」

まずいな。
出会いは肝心だ。
第一印象というのは長く心に残ったりする。
いやそれよりも、会長が無反応の時が一番怖い。
まあ可愛い子好きな会長なら和輝を気に入るだろうが、万が一というのもある。
さてどうしたものか。

「………帰ったぞ」

悶々と俺が悩んでいると悩みの大本である会長が帰ってきた。

「あっ洸先輩おっ帰りー」

駆け寄る有紀を無視して大股で歩く。

「疲れた」

どかりと会長専用の椅子に座ると一言。
……相変わらず俺様なことで。
まあこれこそ生徒会長に相応しいとでもいおうか。

「あーちゃんあーちゃん、話さないの?」

「ああ、そうだったな」

俺は生徒会室にいる面々を見回す。

「外部生のことだが、俺は気に入った」

へえと鏡夜さんが関心したようにする。

「暁が気に入るなんてよっぽどいい子なんだね」

俺は表向きは冷静な無関心無表情キャラで通っているからな。
まあそうでもしないと萌えのせいでニヤニヤが止まらなくなるからな。
キャラ作りは大事だ。
最近は無関心キャラが崩れてきているのが悩みの種だが。

「礼儀正しい奴だった。それに顔も申し分ない」

「可愛かったのー?」

月夜が食い付く。
ノリがいいな月夜よ。
そんなお前が大好きだ。
恋愛的な意味ではなく。

「ああ、そうだな」

次に食い付いたのは会長。

「………そいつってもしかしてちびっこい奴か?」

「…まあ、そうだな」

「そんなような奴なら学園長室前で会った」

……やはり会っていたか。

「どうだった?」

月夜は今度は会長にきく。

「可愛い面してた」

…………フラグは立った!
俺は小さくガッツポーズをした。

「二人がそんなに言うなら、会ってみたいな」

鏡夜さんの言葉に俺も俺もと真崎が手を上げる。

「あいつは俺が先に目を付けたんだ」

会長がギロリと二人を睨む。

「……会長の前に俺が会ったんだが」

「あれは俺のだ」

……………わかってる、わかってるからそんなに睨むな会長よ。
本当は食堂なんかで出会って欲しかったが会長がこう言ってるんだ、よしとしよう。
……ここで煽っとくか。

「それは会長と言えども聞けません。あれは…」

あれは皆のですと言いそうになる。
一旦口を閉じる。
危ない危ない、ここはちゃんと言わねばな。

「あれは、俺のものです」

もう口付けをしてきましたと会長の目を真っ直ぐに見詰めて言う。
会長が身動ぐ。
月夜が呆れたようにため息をつくのが見えた。
……ここでため息なのか。

「どうせお前のことだから軽く口付けただけだろ」

立ち直ったらしい会長が口端を吊り上げる。

「俺は舌入れてやった」

偉そうに言う会長に俺は違う意味で動揺した。
ディープ、ディープ来たよ……
和輝の初めてのディープの相手が会長とか、素晴らしすぎる。
会長を誉めたい。
今、もの凄く。
月夜に小突かれて俺は我に返った。

「…………会ったばかりです。まだチャンスはあります」

「おもしれえ」

そうして俺と会長のバトルが始まった。
…………不本意だがな。
今傍観者となっている他の面々にもいずれ舞台に上がってもらおうではないか。

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