寓話
□神の少年〜白雪〜
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そこはまだ知るはずもない世界。
そう、神のみぞ知る。
神の少年〜白雪〜
瞼を閉じると同時に辺りの空気が変わった。
キンと冴え渡り、遥かに冷たく澄んだ。
「着いたよ、20年後の世界だ」
その声に恐る恐る瞼を上げる。
何か見てはならないものを見るような、
しかし、それでも一刻も早く
見てみたいような不思議な気持ち。
ゆっくりと両目を開く。
ここは小高い山の頂で、
眼下には真っ白な世界が広がる。
美しく色を亡くした世界。
「雪が降ったんだ」
白い世界にまだ雪は降り続いてゆく。
細く吐いた息がその景色に
更に白いフィルターをかけて、
もう白以外の色はないかのようだった。
「寒くない?」
「・・・うん、大丈夫」
そうしてしばらくは全てを忘れて
その景色に見入っていた。
美し過ぎる雪の色をこの自分の
双眸に映すことだけに集中して。