寓話
□神の少年〜未来〜
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私の何を知るというの
なぜ、語るの
耳を塞いでも、君の声が響いてくる
神の少年〜未来〜
「ここが?」
彼はまだ立ち上るぼやけた煙を見つめている。
その情景はただただ寂しい。
まだその言葉を飲み込めずに、
何度も自分の中で反芻する。
この人気のない街に自分が住んでいる。
どうもうまく想像が出来なかった。
「・・・あの工場に君の夫が働いているんだ」
「え?」
自分の未来なんて普通は知らずに生きているもので、
突然20年後の自分の住む場所や夫の話をされても信じられるはずがなかった。
第一この少年が神という保証はどこにある。
好奇心で着いて来たものの、得体の知れない少年に好き勝手言われている。
数秒前までは微塵もなかった猜疑と怒りの念が湧き上がってきた。
「さっきから一体何なのよ!?
神だか何だか知らないけど、何でさっき会ったばかりの男の子に私の未来まで決められなきゃならないのよ!!」
音のない街にやたらと大きな声だけが響く。
喉に冷たい空気が一気に入り込んで痛い。
咽そうになるが、小さく咳を払って口を結ぶ。