寓話
□神の少年〜霖雨〜
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しとしとと
降り続く雨は
瞳の奥に
消えていた
記憶を
消してしまう
ことはなかった
この雨が
止むのが怖い
神の少年〜霖雨〜
その年の夏はやけに暑かった。
日照りが続いて、多くの地方で旱魃が起きたらしい。
夕方になると遠くで雷の音が響いて、
雲は重く空を覆ってしまうけれども、
雨はいつも留まらずに流れていってしまった。
この夏は辛かった。
ただでさえ自由の利かない体で、暑い中いつも通りの生活を送るのも叶わない。
それなのに、ひどい暑さと湿気がまた邪魔をする。
家の中に籠もっていても、蝉の叫び声が暑さを知らせる。
飲んでも飲んでも喉が渇くし、食欲はないのに
食べないわけにはいかない状態にある。
とにかく、この夏はひどかった。