寓話

□神の少年〜霖雨〜
1ページ/7ページ

 
しとしとと
降り続く雨は

瞳の奥に
消えていた
記憶を

消してしまう
ことはなかった


この雨が
止むのが怖い




神の少年〜霖雨〜





その年の夏はやけに暑かった。
日照りが続いて、多くの地方で旱魃が起きたらしい。
夕方になると遠くで雷の音が響いて、
雲は重く空を覆ってしまうけれども、
雨はいつも留まらずに流れていってしまった。

この夏は辛かった。
ただでさえ自由の利かない体で、暑い中いつも通りの生活を送るのも叶わない。
それなのに、ひどい暑さと湿気がまた邪魔をする。

家の中に籠もっていても、蝉の叫び声が暑さを知らせる。
飲んでも飲んでも喉が渇くし、食欲はないのに
食べないわけにはいかない状態にある。

とにかく、この夏はひどかった。

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ