寓話
□神の少年〜面影〜
1ページ/6ページ
空を畳んで
代わりに
黒い幕を引く
星を散らして
冬の匂い
天に座すオリオン
冬枯れの風
髪を乱す
足元を掬う
風に咲く白い花が
「風花」というのだと
知ったのは幼い日
こんな日は舞うよ
息で霞む空
儚く散る雪の花
神の少年〜面影〜
初めて来た街に、何故か懐かしさを覚えた。
美しい記憶と共にどこかへ葬られていたかのように、
掘り起こされて鮮やかに輝く。
この街へ越してきた頃には、もう大分年の瀬も押し迫ってた。
出産が重なったこともあったし、夫の仕事の引継ぎが長引いたこともあった。
前住んでいたところからは列車で1時間半。
まるで、遠く海までもを隔てた異国の地へ来た思いがした。
その反面、無性に懐かしいような、いとおしいような気持ちさえするから不思議だ。
その活気に満ちた街の風景に、自分達が溶け込んでゆく様をしばらく想像していた。