寓話
□神の少年〜散華〜
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凍れる花は
脆く 儚く
凍れる故に
脆く 散る
凍れる花の
散った 花弁は
凍れる故に
ひどく 鮮やか
来たりし春に
美しき
色だけ残して
神の少年〜散華〜
ひどく寒い。
しかし、そんなことを忘れさせる程に恐ろしい。
いつかこの時が来るのかもしれないと、
心のどこかでは覚悟していた。
覚悟せずにはいられなかった。
ここは工場のある街だ。
戦局が悪化すれば、敵は上空を飛び回り、
工場や主要な都市を焼き尽くしてゆく。
安全であるはずはなかった。
夫は大丈夫だろうか。
上手く逃げ出しただろうか。
また、会えるだろうか。
それを思うと、怖くて全身の熱が引いた。
しかし、怖いという思いと共に、
何故か冷静な自分が寄り添っていた。
絶え間なく続く爆撃で、惨禍は見ずとも知らされているというのに。