寓話

□神の少年〜白雪〜
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スと、再び彼は手を差し出してきた。

「下りよう、君に見てもらいたい」

思い切ったように彼は言う。
真っ直ぐに見てくる目。
きつく結ばれた唇。
真剣なんだ、この為に連れてきたのだ。
そう感じたからこそ静かに頷いた。

少し行った所に麓まで降りられる
長く一本に伸びた石の階段があった。
ここは神社の境内だったらしい。
薄く苔を纏った社は雪を被っている。

とても小さな神社で、
一応手入れはされているようだが、
冬枯れの木々や踏み荒らされていない
一面の雪が淋しげな雰囲気を作る。
色がない中に寂れた朱色の社だけが鮮やか。
雪を背負った鳥居の前で構える二頭の狛犬は
深い山の奥から街を見守るように立ち並ぶ。

「滑るから気をつけて」

その声に踵を返して彼の方を見る。
それを認めてから、
彼が先導して慎重に階段を下りだした。
雪はくるぶしまで足を飲み込む。
しかし一歩一歩、街は近づいた。
まるで白い渦の中に堕ちてゆくように。
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