寓話

□神の少年〜未来〜
2ページ/6ページ

彼の瞳は黒々と澄んでゆく。
真剣だ、またそう思った。

「素敵な街なんだ、最初に言っただろう?」

「違う、私は未来をどうのこうの言われることに・・・!!」

「違くないんだ、本当は心の中でこの街を嫌だと思っているのだろう」

彼の表情はいつの間にか笑っていなかった。
全ての表情を捨て、見ただけでは彼の気持ちは読み取れない。
まだ怒った表情で怒鳴られた方がいい。
これでは自分がひどく苛められているような気分になる。

「綺麗な街だとは思っているだろう。」

「ええ」

「でも、自分が住む街ということは認めたくない。そうだろう」

彼の目は真っ直ぐ自分を射て、身動き一つできないように体が強張る。

「本当は活気のある明るい街なんだ」

そうしてまた彼は白い空へと上る煙に目をやる。
白い世界に不釣合いな薄黒い色。

「・・・そろそろ、教えてよ。何のために連れてきたのか」

「・・・」

「じゃなきゃ帰る」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ