寓話

□神の少年〜朝影〜
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放たれたかのように、光が部屋に入り込んでくる。
思わず目を細める。
その色はまだ朝早いもの。
浅く赤を残して全身を包むかのように射す。

光はいつもよりずっと強く感じた。
少しずつ瞼を持ち上げ、水滴を一面に貼り付けた窓の外を見やる。
それは朝日を映して柔らかな赤に染まった一面の雪景色だった。
その中に落とされた影は、まるで取り残されたかのように青い。
そして、そのくっきりと輪郭を縁取った青い影が、周りの赤さを際立たせる。

「お姉ちゃん、お誕生日おめでとう」

後ろからかけられた声に振り返って微笑み、また外を見る。

冷えた頭で思い出していた。
今日見た夢もやはり雪。
しんしんと止むことなく雪が降り続くのを、小高い所から眺めていた。
眼下に広がる雪を厚くかぶった街。

しかしそこまでで、後は思い出せない。
もしかしたら、延々と雪を見ているだけの夢だったのかもしれないとも思った。
外では雪が降り積もって、あまりに寒いからそんな夢を見たのかもしれない。

思い出そうとしても、ただ雪は降るばかりで先を見せてはくれない。
ただ、とても美しい夢だと思った。
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