寓話

□神の少年〜霖雨〜
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やっと暑さも和らいできたのが9月も半ばを過ぎた頃で、
そこからは一気に秋が深まっていった。
まるで夏に堰き止められていた秋が一挙に押し寄せてきたかのように。
そこで急いで衣替えや、夏物の日用雑貨などをしまいだした。
こうして、この年の秋は慌ただしくやってきたのだった。

もう十月にもなると、1ヶ月前までのあの暑さは夢か幻のようで、
グッと気温が低くなったのに適応できない人たちは次々と風邪をひいた。
それに拍車をかけるように天気の悪い日が続いた。
湿けった空気が気持ちまで沈鬱にさせる。
しかし、今風邪をひくわけにはいかない。
夜は暖かくして早く寝、栄養を十分に摂るようにした。

サヤは20歳になり、そのお腹には子供を身籠っていたのだ。
お腹も大分大きくなり、出産も迫っていると思われた。

その秋は木々も一斉に色を染めて、夏から秋への転換が早かった。
サヤは日々気をつけていたので、風邪をひくことはなかった。
今、自分の体は自分一人のものではない。
大切な子供をまさに腹の中で育てているのだ。
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